メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

コーヒーを楽しむために熱帯林問題を考えよう

国際的な認証制度は対策として期待できるが課題も抱えている

米山正寛 朝日新聞DO科学編集長

 コーヒーはみなさんにとって、どんな存在なのだろうか。嗜好品として世代を超えて愛されているようであり、寝覚めに、食後に、欠かせない人も多かろう。

拡大さまざまな香りと味わい、そして飲み方が楽しめるコーヒー
 コーヒーを日本人が初めて口にしたのは江戸時代、海外に門戸を開いていた長崎・出島でのことだったらしい。明治時代以降、長く喫茶店でのちょっと高級な飲み物だったわけだが、今ではすっかり大衆化した。大手のコーヒーチェーン店が全国各地に展開しているし、コンビニエンスストアのレジ横でも盛んに売られるようになった。コーヒーゼリーやコーヒーキャンディーなども人気で、コーヒーの消費は今後もさまざまな形で広がっていく予感がする。当然、そうした消費拡大はコーヒーの産地である熱帯諸国の人々の暮らしや森林のあり方と関わっているはずだ。しかし、私たちはどこまでそれを意識しているのだろうか。 

大規模にも小規模にも取り組まれている栽培

拡大名古屋大学教授の原田一宏さん
 そんな思いを日頃から抱いていたところ、ちょうどこの春、コーヒーを通して熱帯の森林や野生動物、人々の暮らしに目を向けてもらおうとした小学高学年用の児童書『コーヒー豆を追いかけて 地球が抱える問題が熱帯林で見えてくる』が刊行され、著者の名古屋大学教授(前兵庫県立大学准教授)、原田一宏さん(50)に会う機会があった。原田さんは、熱帯の森林とそこに暮らす人々の研究を、主に東南アジアで続けてきた。自分で豆の焙煎もするコーヒー好きのため、7年ほど前からコーヒーの生産現場へも足を運びながら、熱帯の自然と暮らしを守るために何ができるかを、考えてきたそうだ。

 アフリカのエチオピアを原産地とし、今では熱帯・亜熱帯の各地で育てられているコーヒーの木だが、暑い環境に植えれば育つというものではない。本来は、日射しが強すぎず、温度が高すぎず、適度に湿った土地を好むという。しかし、熱帯の高原地帯を切り開いてコーヒーの大規模農園が設けられ、日射しに強い品種ばかりが大量に植えられている地域もある。そうした地域では、自然環境が大きく改変されて野生の動植物が姿を消し、生物多様性への影響が懸念されている。また栽培に従事する大勢の人たちが農園近くに移り住みながら、元々暮らしていた人たちが追い出されることさえある。原田さんも視察に訪れたベトナムで、遠くまでコーヒー農園が広がっている光景を見た。

拡大ベトナムに設けられた大規模なコーヒー農園=原田一宏さん提供
拡大コーヒーの木とシェードツリーが植えられたインドネシアの小規模農園=原田一宏さん提供

 一方、比較的小さな規模でコーヒーが栽培されていることも少なくない。原田さんが通うインドネシアでは ・・・ログインして読む
(残り:約2832文字/本文:約3853文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

米山正寛

米山正寛(よねやま・まさひろ) 朝日新聞DO科学編集長

朝日新聞科学医療部記者兼DO科学編集長。朝日新聞の科学記者を経て公益財団法人森林文化協会へ出向し、事務局長補佐兼「グリーン・パワー」編集長を務めた。2018年4月から現職。ナチュラリストを夢見ながら、とくに自然史科学と農林水産技術に関心を寄せて取材活動を続けている。

米山正寛の記事

もっと見る