ジョン・ミッチェル氏の新著「日米地位協定と基地公害」が暴露
2018年07月11日
沖縄の環境問題の本質を理解する上で重要な本が、このほど刊行された。ウェールズ生まれの調査報道ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏による『日米地位協定と基地公害―「太平洋のゴミ捨て場」と呼ばれて』(岩波書店)である。
米国情報自由法(FOIA)を駆使しての公文書公開と、退役あるいは現役の兵士、軍雇用員やその他の内部告発者からの聴き取りで入手した情報にもとづく力作である。彼の調査活動がいかに米軍にとって不都合であったかは、海兵隊犯罪捜査部がミッチェル氏を監視し、その取材活動を妨害したことが雄弁に物語っている。そして彼は、基地公害をもたらす主犯は米軍であるが、それを隠蔽(いんぺい)することに加担している共犯者が日本政府であることを暴いている。
ミッチェル氏がこの著作で「21世紀のエージェント・オレンジ」として紹介しているのが、沖縄の人々の飲料水源を汚染する物質として近年急速にクローズアップされてきた米軍起源の環境汚染物質の有機フッ素化合物PFOSである。
この問題が表面化したのは2年前の2016年1月であり、県民に飲料水供給を行う県企業局が、嘉手納基地周辺の河川からPFOSが高濃度に検出された、と発表したことが端緒である。
沖縄タイムスが報じた北谷浄水場ならびにその水源地の長田川ポンプ場、比謝川ポンプ場、そして嘉手納基地排水(大工廻川)のPFOS検出状況は図の通りである。日本にはPFOSについての水質基準がなく、米国環境保護庁が2016年に定めた健康勧告値70ng/Lを準用しているが、それを超える値が北谷浄水場の浄水にも検出されている。
実はこの勧告値は、緩すぎるとして米国国内でも見直す動きがあるものである。嘉手納基地とつながる大工廻川での濃度が高いことから、企業局は「基地由来の蓋然(がいぜん)性が高い」とし、原因究明に向け基地内への立ち入りを求めているが認められず、米軍との因果関係を立証できずに足踏みしているのが現状である。
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