氾濫、崩壊……広域で同時多発する豪雨災害は、今後どんな危険をもたらすのか
2018年07月12日
毎日、死者の数が更新されていく。平成最悪の豪雨災害。中でも町全体が水につかったことで注目を集めた岡山県倉敷市真備町と、「深層崩壊」とみられる土砂災害の現場を8日、朝日新聞社ヘリから見た。
山にはさまれた細長い平野にある真備町。一見するとどこが川かわからない。あたり一面、泥水につかっている。家の間の道は見えない。民家の2階の窓から身を乗り出し、タオルを振っている人がいる。夜中に突然、家に水がはいってきて、必死に2階に上がったのだろうか。
夜が明けるまで恐ろしい思いをしたことだろう。今だって、どれだけ不安な気持ちでいるのだろう。病院のベランダで救助を待つ人が多数いる。はしごから降りてボートに乗る。たくさんの人を乗せたボートがゆっくり動きだす。
このあたりは、小田川が高梁川に合流する場所に近い。高梁川の流路は曲がっていて、水位が上がりやすく、小田川へ逆流することもある。以前から洪水の危険性が指摘され、河川改修が計画されていたという。
泥水につかった町の次に見たのは、兵庫県宍粟市の山間部。緑の山がざっくりえぐりとられ、山肌を見せている。その下には、土砂に押しつぶされた家。青い屋根とばらばらになった木材が散乱し、消防や自衛隊が捜索活動にあたっている。あれだけの土砂が一度に崩れてきたらなすすべはない。
近くの川はそれほど濁っていない。一時的には濁ったのかもしれないが、もう流れてしまったのだろう。もし、崩壊した土砂が川をうめて土砂ダムを作っていたら、決壊する時に、土石流となり、さらに下流に被害を出していたかもしれない。
その近くで、もっと大きい斜面崩壊を見た。ヘリに同乗した京都大防災研究所の松四雄騎准教授によると、幅100メートル、長さ300メートルほどはありそうだという。崩壊した土砂は、下の道路をふさいでいた。これだけえぐれていると、表面の風化した層の下の岩盤まで崩壊した「深層崩壊」の可能性がある。
深層崩壊は大量の雨が降って地下深くしみこまないと発生しない。今回、兵庫県に降った雨は降り始めから400ミリを超えている。
この異常な量の水をもたらしたものは梅雨前線だ。梅雨末期の豪雨はめずらしくないが、これだけ広範囲に被害を出すほどの雨を降らせることはまれだ。日本上空の大量の水蒸気は、台風7号が通過した後に残したもので、台風の影響で梅雨前線は南下し、西日本上空で停滞した。そこに、南からの大量の水蒸気を含む風が吹きこみ、さらに水蒸気を増やして豪雨をもたらした。
6月28~7月8日の期間で、72時間降水量の観測史上最大を更新した地点は119地点、24時間降水量では75地点。地図に印をつけると、西日本がうまってしまうほどだ。6月28~7月8日の降り始めからの総雨量は、高知県馬路村で1852.5ミリ、愛媛県西条市で965.5ミリを記録した。
松四さんが、これからは「西日本大水害」のようなことを考えなくてはならないのだろうか、と話す。「東日本大震災」の後、地震では広域災害が起こりうるという想定見直しが始まった。「洪水や土砂災害については、局地的な豪雨を考えてきた。今回のように同時多発で複合的に起こる水害は想定されてこなかった」と松四さん。気象の専門家は、
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