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チバニアンの真実-地質年代の決まり方

なぜ千葉? 77万年前に千葉で何があったのか?

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

カンブリア紀とジュラ紀

 イギリスに旅したとき、ウェールズのラテン語名が「カンブリア」であることを知ってびっくりした。古生代の始まりである「カンブリア紀」はここから来た名前だったのか。ムー大陸のように、古代のどこかにあったかもしれない伝説の場所がカンブリアだとなんとなく思っていた。古い化石が見つかったイギリス・ウェールズの地名からつけられた名前だったとは。

 フランスに旅したときには、フランス東部からスイス西部に広がるジュラ山脈の名前を知って驚いたものだ。映画「ジュラシックパーク」でお馴染みのジュラ紀は、ここからついた名前だった。恐竜が活躍した時代の化石がこの山脈で見つかったからだ。

 地球は46億年前に生まれ、カンブリア紀に入って多様な多細胞動物が繁殖し、ジュラ紀には恐竜が活躍した、と言うけれど、実際のところは多細胞動物の化石が見つかる時代をカンブリア紀と呼び、恐竜の化石が見つかる時代をジュラ紀と呼んでいるわけだ。しかも、化石が見つかった場所の名前を取っているのは、ある意味ご都合主義である。時代を場所の名前で呼んでいいのか?

 だが、北京原人は北京で見つかったからこの名前がついたのだし、ジャワ原人も同様。人類は、場所で名前をつける以外にいい方法がわからないのかもしれない。だから、地質時代に千葉の名前が入る「チバニアン」が登場するのも不思議なことではない。

地質時代の名前決定のしくみ

 いや、まだ「チバニアン」という名前がつくと決定したわけではない。だが、地元はすでに大変盛り上がっている。試料を採取した地層が見える養老渓谷を訪れる人も激増している。6月には国の文化審議会が養老川流域田淵の地層を天然記念物に指定するように文科大臣に答申した。

養老渓谷への入り口には、のぼりが立てられ、売店が出ている=2018年5月
チバニアンの現地を見ようと訪れた人たち=2018年5月

 地質時代の名前を決めるのは、「国際地質科学連合(IUGS)」という地質学者の国連のような組織だ。その下部組織として、最新の研究結果を踏まえて名称や年代を決める「国際層序委員会(ICS)」がある。その下に小委員会があり、さらにワーキンググループがある。

試料を取った穴を示しながら説明する岡田誠・茨城大教授

 岡田誠・茨城大学教授をリーダーとする日本チームが申請した命名案「チバニアン」は、ワーキンググループによる第1次審査で支持され、小委員会による第2次審査が始まったところだ。ここを通過しても、さらに上部のICSで投票にかけられ、60%以上を得票しなければならない。最後にIUGSの投票で60%以上の賛成を得て、ようやく決定だ。だから、現段階では(仮称)とか(予定)とかをつけるべきなのだが、本稿ではそこは省略する。

まだ名前がない「中期更新世」

 「チバニアン」とは、ラテン語で「千葉時代」のことである。申請チームが作る「チバニアン(千葉時代)の解説」ホームページによると、地質時代の命名にはルールがあって、「英語では、地理的用語の形容詞型に"ian"または"an"をつける」ことになっている。チームは、「Chiba」の形容詞型「Chiban」にianをつけて「チバニアン」と提案した。「千葉」に形容詞型があるとは知らなかったが、

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