今回の洪水を分析し、防災への実感を高める方策を考える
2018年08月13日
この夏は西日本豪雨、災害級猛暑、台風12号と災害が連続した。いずれも記録的な災害だった。なぜ、このように続けて起きたのか。一言で言えば、本来は赤道付近で吹いている貿易風が日本付近まで北上したためだ。
大循環の原動力は赤道での上昇気流なので、それに対応する貿易風も通常は南北に変動しないが、それがどういうわけか日本近くまで来てしまったのが7月だった。そのため、湿度の高くて暖かい空気が日本の上空に流れ込んできたのである。これが梅雨においては大雨をもたらし、その後は猛暑を呼び込んだ。台風12号の奇妙な動きも、貿易風のせいである。
本稿では、あれほどの洪水被害を出した豪雨を振り返り、今後に取るべき方策を考察したい。
西日本豪雨がどのくらい記録的だったかは、気象庁の平成30年7月豪雨サイトに詳しい。防災科学研究所も特別サイトを設けて調査結果を更新している。防災研ではアメダスだけでなく、国土交通省の気象レーダ網による降雨強度推定「XRAIN」も用いている。XRAINは250メートルのメッシュで雨の強さを1分ごとに実況してくれるほか、川の水位の情報も実況してくれる。災害対策に必須のサイトといえる。
そこで、まずこれらの資料を元に、降雨と洪水の関係を簡単に説明する。
気象庁の資料には豪雨期間中の総雨量の分布が示されている。過去3回の豪雨を図に示す。それぞれの雨量のピーク値が違うので、色のスケールが異なることに注意されたい。例えば2014年の高知・徳島豪雨の図で少なめの雨量に色分けされている九州南部は、他の年の豪雨の図では多めの雨量にあたる。
これは2014年の豪雨での更新数である17地点(72時間雨量)、15地点(24時間雨量)、13地点(1時間雨量)や、昨年の九州北部豪雨での更新数(それぞれ6地点、12地点、7地点)を大きく上回る。今回の豪雨がいかに「広範囲」で記録的だったかがうかがい知れよう。
今回の豪雨では、特に長時間の積算雨量での更新が多い。これは、川の排水能力が流域から集まる水量に追いつかないタイプ(広域型)の洪水になりやすかったことを意味する。洪水リスクは、アスファルト面の排水が追いつかないタイプ(都市型)の洪水や傾斜地の小規模河川では1時間雨量が多いほど、二級河川では24時間雨量が多いほど、一級河川では72時間雨量が多いほど高くなる傾向にあるからだ。洪水リスクの推定では、24時間や72時間雨量は、降り始めからの総雨量で代用できることも多い。
では、どのくらいの雨量で川は氾濫するのか。浸水危険地域に住んでいる人には、これが最も重要だろう。結論から言うと、川ごとや地域ごとに異なるので、それぞれの地点で過去の統計から求めるしかない。また、氾濫の結果として堤防が決壊するかどうかとなると、堤防の強度や流れの向きなどが関係しているので、こちらは建設のプロに任せるしかないだろう。
だが、それでも今回の西日本豪雨で大雑把な関係は見えてきた。それは、瀬戸内海側では降り始めからの総雨量や72時間雨量が流域平均で300〜400ミリを超えると、大規模な氾濫をする主要河川が出てくるらしいということだ。
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