柴田一成(しばた・かずなり) 京都大学大学院理学研究科附属天文台教授
京都大学大学院理学研究科博士課程中退(理学博士)、愛知教育大助手・助教授、国立天文台助教授などを経て1999年より現職。太陽と宇宙における様々な爆発現象の謎を、電磁流体力学を用いて統一的に解明する研究を推進。近年は太陽フレア、宇宙天気予報の基礎研究から、太陽型星のスーパーフレアという驚くべきテーマにたどりつく。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
むしろ寒冷化が心配、めったに起きないスーパーフレアの対策も必要
猛暑である。8月2日の朝日新聞朝刊によると、「月平均気温は1946年の統計開始以来、東日本で過去最高となった・・・気象庁は7月の天候について『異常気象だった』 との認識をしめした」。太陽活動が何か異変を起こしているのではないか? 最近、多くの人からこんな質問を受ける。
先に結論を述べよう。最近の猛暑に、太陽活動の変化はほとんど関係ない。過去数千年の太陽黒点数と気候変動の関係に関する経験データに基づくと、黒点数が極めて少なくなる「大極小期」と呼ばれる時期には地球は寒冷化し、逆に黒点数が多くなる「大極大期」には地球は温暖化することが知られている(図1)。ただし、その物理メカニズムはまだわかっていない。
図1を見ると大極小期も大極大期もそれぞれ50~100年というような時間スケールで継続し、数百年に一回くらいのペースで繰り返し起きていることがわかる。1640年~1710年の期間のマウンダ―・ミニマムの場合、地球全体の平均気温が約0.6度低下した。今では決して凍らないロンドンのテムズ川が、当時毎年凍っていた。20世紀以後の地球温暖化は100年間に0.6度程度の上昇なので、マウンダ―・ミニマムの寒冷化の方がもっと変化が速かったと言える。
黒点数というのは、約11年の周期で増えたり減ったりすることが知られている。しかし11年くらいの短期変動では、地球全体の気温への影響は見えてこない。数十年~数百年という長期変動でようやく地球の気候への影響がわかる。
11年の黒点数変動で地球に影響を及ぼす可能性は、気温ではないところにある。黒点数が多くなると、
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