変わる世界のプルトニウム政策[1]
2018年08月16日
原子力委員会は7月31日、「プルトニウム利用の基本的な考え方」(利用方針)を15年ぶりに改定し、日本保有のプルトニウムの削減方針を打ち出した。日本に大量の余剰プルトニウムがあることは周知のことだったが、これまで原子力委も政府も「量」にはあまり気を使っていなかった。今回、米国から要請がきたことで敏感に反応した。やはり米国からの外圧には弱い。
今は「この方針で本当に削減できるのか」が議論されているが、私は削減のトン数の議論よりも、この新方針が日本の原子力路線に与える影響に関心がある。新方針は「プルトニウムを増やしながら減らす」という矛盾した制約を民間会社の発電活動に課すことになり、再処理工場の操業の縮小化、ひいては核燃サイクルへの大きな打撃になると予想される。
プルトニウム削減の話は突然に出てきた。日本経済新聞が6月10日、「米がプルトニウム削減要求」という記事を書いた。核兵器の材料になるプルトニウムが日本では47トンもたまっている。中国などから「不要の疑念を呼ぶ」ので、日米原子力協定の延長(今年7月17日)を機に、日本に削減を求めたというもの。
これまで米トランプ政権は、日本の再処理、余剰プルトニウム問題には厳しい態度をとらない、と思われていたが、そうではなかった。政権内でどんな議論があったかは伝わってこない。
発表された「保有量を減少させる方針」は5項目。
要は第1項目の「プルサーマルで使う分だけ、再処理する」である。再処理などは電力業界の活動だが、2015年にできた再処理等拠出金法によって、国が計画の認可をする権限をもつ。これを使って国が再処理をコントロールするということだ。
一方で、「プルトニウムを増やす(抽出する)」六ケ所再処理工場が2021年にスタートする予定だ。フル操業すれば、年間7トンのプルトニウムが出てくる。こんな量を消費する能力はないので、再処理工場はスタートしても低い操業率に抑えられることになる。
それだけではない。日本のプルトニウムはフランスに約16トン、英国に約21トン、日本国内に約10トンある。大半を占める海外のプルトニウムも、日本国内の小さなプルサーマル能力の中で減らすしかない。
この状況の中で、何をするか、何ができるかは限られてくる。
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