問われる日本社会の対応
2018年09月04日
8月20日から一週間、南太平洋のフィジーの首都スバで開かれた国際会議に参加した。「太平洋地域廃棄物管理円卓会議」というのがその会議の名である。
太平洋の島々には、「天国に一番近い島」というイメージがあるが、彼らは今、深刻な廃棄物問題で苦しんでいる。彼らが直面しているのは、気候変動(地球温暖化)による海面上昇で、環礁低島そのものが消失するかもしれないという恐れだけではないのだ。
バイニマラマ首相は、2017年11月にドイツ・ボンで開催された国連気候変動会議COP23で議長を務めた人物である。開催国はフィジーだが、大きな会議場がないため、開催地がドイツとなった。大洋州諸国を代表する政治家の一人として、地球環境問題が島嶼国に与える衝撃を痛感し憂慮している。
島嶼国では廃棄物のリサイクルに大きなハンディがある。
広大な大洋に点在している小さな島々には、域外から次々と商品が入ってくるが、それが廃棄物になるとリサイクルしようにも島が小さくて量がまとまらず、先進国のリサイクル市場からは遠く、輸送コストもかさみ、島から出ていかないのである。
昔ならば放置しておいても自然にかえった廃棄物だが、今では自然には戻らない人工物が急増し、島がゴミに埋もれる状況になってきている。
日本国内でも、沖縄は離島県であるがゆえに、廃棄物のリサイクル率は常に本土よりも5ポイント低い。大洋州の島嶼諸国の場合には、それがさらに顕著になる。沖縄と同様に観光で生きる島が多いが、島がゴミで埋もれてしまっては観光産業も立ち行かない。
日本はこれらの島嶼諸国に対して、2000年以来、息の長い技術協力を行っており、現在の計画では2022年までその協力が続く。
日本の協力の基本理念はPacific to Pacificというものであり、地域の人材と協力しつつ、地域の実情にあった良い取り組みをまず作り上げ、その中で育った地域の人材が、地域内の別のところでの問題解決に協力するというものである。欧米の外部注入型と対照的な自助努力支援型の技術協力といえよう。
日本のこの取り組みの中で育った人材が数多く出席している円卓会議では、日本の技術協力に対する信頼感をひしひしと感ずることができた。
しかし、日本へのこの信頼感が揺らぐのでは、との懸念も会議に参加する中で湧いて来た。それは、
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