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ライドシェア「謝礼あり」って白タクじゃないの?

サービスが始まった「スマホで呼べる相乗り自家用車」のギリギリ度

伊藤隆太郎 朝日新聞記者(科学医療部)

 使われていないモノや空間、労働力などを共同で利用する「シェアリングエコノミー」が、さまざまな場面で広がっている。共有(シェア)を土台とする経済のあり方は、むだ遣いを減らして持続可能な社会をつくろうとする思想とも結びついて、注目度が上昇中だ。

 住居を共同利用するシェアハウスはその代表格で、いまやすっかり市民権を得た。さらに近年は、そんな空間利用の発展系として「民泊」も登場している。

 こうしたシェアエコの広がりを支えているのが、ITの進化だろう。かつては面倒だった利用者と提供者のマッチングが、スマホなどを使うことで簡単になった。新しいテクノロジーが古い制度を変えていく推進力になっている。

猛反発するタクシー業界

 拡大するシェアエコ分野で、民泊と並ぶもう一つの注目株が「ライドシェア」だ。乗用車の共有という意味で、直訳すれば「相乗り」となるが、民泊と同様にさまざまな議論を呼んでいる。車を営業運転できる第二種免許がないのに、人を運んで報酬を得れば、いわゆる「白タク」と呼ばれる違法行為にあたり、厳しく取り締まられるからだ。

拡大Azitのサービス体験会。利用者(左)と運転者(中)が初対面のあいさつ
 ところが最近、この制約を巧みにクリアしそうな新サービスが登場した。その一つが、Azit(東京都港区、吉兼周優社長)が始めた「CREW」だ。スマホのアプリを使って、目的地まで「相乗り」できる車を探し出せる。ポイントは、「対価」(つまり運賃)の支払いを「任意の謝礼」とすることで、違法性の回避を図っている点だ。ここに白タク行為との線引きがある。

 当然ながら、タクシー業界は猛反発だ。それはそうだろう。高いコストをかけて免許を取得し、車や装備を維持している運転手やタクシー会社にとっては、死活問題にも見える。このほどAzitが主催するメディア向けの体験会があった。実態を見てきた。

「自家用車で有償運送」は違法だが

 CREWの仕組みはこうだ。利用者はあらかじめ、名前やクレジットカード番号を入力して、利用者登録をしておく。運転者も事前登録と審査がされている。利用者がアプリから自分が行きたい目的地を打ち込むと、システムが運転手に自動的に呼びかけをする。「相乗りをしてよい」という運転手が応答すれば、近くまで迎えに来てくれる。無事に目的地へ着けば、スマホを使って支払いだ。

拡大体験会でライドシェア用アプリの使い方を説明するスタッフ
 このとき、決済される項目は次の三つ。

 ①ガソリン代や高速料金の実費
 ②マッチングシステムの手数料
 ③任意での謝礼

 最後の三つ目が、サービス最大のポイントである。運営会社Azitによれば、運転手に渡るのはこの任意の謝礼であり、運転の対価ではない。あくまでも任意だから、支払わなくてもよいという。自家用車での有償運送は明らかな違法だが、任意の謝礼であれば合法だと運営会社は主張する。

国交省がガイドラインで明確化

 Azitがサービスに踏み切った背景には、今年3月に国土交通省が示したガイドラインがある。このなかで国交省は、違法にならないライドシェアを次のように例示した。

 サービスの提供を受けた利用者からの給付が、「好意に対する任意の謝礼」と認められる場合
【具体例】
 運送が偶発的に行われた場合で、意図しない金銭の支払いが自発的に行われた。(たまたま用務先が同一方向にあり、懇願されて同情させたなどの場合で、利用者の自発的な気持ちから支払いが行われた)

 さあ、どうだろう。CREWの利用者が支払う謝礼は、本当に任意で自発的なのか。実はCREWの古いバージョンには問題があった。アプリ画面に「謝礼をしましょう」と促すような文言が表示され、国会でも「謝礼を誘引している」と追及された。国交省は「修正するよう申し入れている」と答弁し、現在の最新版アプリからはこの文言が消えている。

拡大CREWの支払い画面(Azit提供)
 また、「白タクの合法化を許すな」と訴えるタクシー運転手らの労働組合「自交総連」は、役員の試乗体験記を組合報に載せているが、そのなかでCREWの運転手は「謝礼が少ない人とは、もう次からは私の車とはマッチングされないしくみになっている」と証言している。

 謝礼の有無や金額によって利用者が選別されるなら、謝礼を支払わなければ「相乗り」ができなくなり、とても任意とは呼べなくなるはずだ。実際、国交省もこうしたケースを「自発的な謝礼とはいえず、登録や許可を要する」と明示している。しかしAzitの広報担当者によれば、 ・・・ログインして読む
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筆者

伊藤隆太郎

伊藤隆太郎(いとう・りゅうたろう) 朝日新聞記者(科学医療部)

1964年、北九州市生まれ。1989年、朝日新聞社に入社。筑豊支局、西部社会部、AERA編集部などを経て、2016年から科学医療部。

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