水産庁はトド管理基本計画を知床も含めて立てるべし
2018年10月11日
西太平洋のトドは絶滅危惧種であると同時に、冬に来遊する北海道と青森県では漁網を壊して魚を横取りする害獣である。水産庁は、2014年にトド管理基本方針を定め、10年後(2024年度)の来遊個体数を2010年の60%となるまで減少させることを目標とする管理基本計画を立てた。これを見直す検討会が11月から始まる。この機会に、日本海に来遊するトドだけを対象とするのではなく、知床に来遊するトドも含めて管理計画を立てることを提言したい。知床が世界遺産に登録されたからといって水産庁が知床を切り離すのは「責任放棄」のそしりを免れないと考えるからだ。
トドの個体数はかつて採捕等により減少し、1994年から採捕数が制限された。2007年からは航空機目視調査結果などから日本海に来遊する個体数を推定し、米国で海獣管理に採用されている生物学的間引き可能量(Potential Biological Removal=PBR)という概念と国内での混獲数の推量に基づき、採捕数の上限を120頭と定めた。その結果、近年その個体数が1960年代の水準まで回復し、1988年以後「絶滅危惧種(I類)」と指定されていたのが2012年のレッドリスト見直しで国内では解除された。
他方、特に北海道日本海側のトドの来遊数が増え、漁業への直接被害も15億円前後にまで増えてきた(図2、Matsudaら2015)。こうした状況で、水産庁はトドと漁業の共存を図るため、2014年にトド管理基本方針を定めたわけだ。
基本方針では、(1)トドの絶滅の危険性がない範囲内でトドによる漁業被害を最小化し、(2)絶滅危惧種に指定されるほど減らした過去の経験を踏まえ、予防原則と順応的管理の考え方を導入し管理する、という基本的考え方のもとで、管理の目標が立てられた。その見直しに当たって、知床に来遊するトドも含めて計画を立てるべきだと考える理由は、3つある。
第一に、
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