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日本も開始、プルトニウム廃棄の研究はどこへ?

変わる世界のプルトニウム政策[4]

竹内敬二 エネルギー戦略研究所シニアフェロー

 余剰プルトニウムの扱いに悩む国が増えている。英国、米国は、プルトニウムを廃棄する研究にも乗り出している。日本も来年度から始めることになった。まずは小規模な研究だが、「プルトニウムの全量利用」を柱にしてきた日本の原子力政策の転換だ。

 廃棄の対象になるのは、ごみ混じりなど使い物にならないプルトニウムだ。しかし、3カ国のプルトニウムの置かれた状況とプルトニウムへの認識には大きな差がある。英米では、廃棄研究を将来、プルトニウムを積極的に減らす手段として使う可能性もある。

廃棄対象は「ダーティー・スクラップ」

 廃棄研究を始めるのは日本原子力研究開発機構(原子力機構)。日本が保有する47トンのプルトニウムのうち、原子力機構はうち4.6トンを所有している。あとは電力会社の所有だ。

 文部科学省は2019年度の政府予算に、調査費などとして2000万円を概算要求した。米英仏に研究者を派遣するほか、将来は米国との共同研究も考えている。

拡大プルトニウムに不純物が混ざった「ダーティー・スクラップ」=日本原子力研究開発機構提供
 廃棄の対象は、実験時に不純物が混じったり、プルトニウムを扱う密閉した部屋の壁にこびりついたりした少量のプルトニウム。「ダーティー・スクラップ」と呼ばれる。

 従来の日本の政策は「プルトニウムの全量利用」であり、こうした少量のプルトニウムも精製して燃料に加工することにしていたが、今回、方針を転換した。ごみ混じりの粉末を酸で溶かしてプルトニウムを取りだし、精製するには、技術も要るし、コストもかかる。今やプルトニウムは、それほど手をかけて少量を手に入れるほどの貴重物でもなくなった。廃棄の技術は、精製とは逆で、純粋なプルトニウムとして取り出せないように邪魔物(=ごみ)と混ぜて地中深くに埋めることだ。

 原子力機構は今後、少量を廃棄するが、残りを今後どう使うかははっきりしない。もんじゅで年間0.5トンほど使う予定だったが、もんじゅは廃炉になった。より小さい高速増殖炉「常陽」で必要なのは、年間0.1トン程度とされる。

 原子力機構は将来、海外での処分委託も考えている。外国が自国分を捨てる際に「一緒に捨てて」と頼むということだ。日本はかつて原発導入の初期に、英国とフランスに約7100トンの使用済み燃料の再処理を委託して、プルトニウムを抽出した。廃棄処分も委託することになるとは皮肉なものだ。

英国の捨てる研究、「イモビライゼーション」

 英国では10年ほど前から、プルトニウムをどう扱うかの議論を始めた。再処理工場「ソープ」の運転停止(2018年)とともに約140トンの余剰プルトニウムを抱えるという危機が予見されたからだ。

 その議論(パブリックコンサルテーション)の結果を2011年12月に発表した。その内容は、次の通りだ。

 まず、選択肢は三つある。
① MOX燃料として原発で利用する。
② ガラス固化して地中に廃棄する(イモビライゼーション、固定化という)
③ 長期管理する。

 そして、①の「燃料として利用する」が、政府が優先する選択肢である、となった。

 しかし、英国には現在、MOX燃料工場も、MOX燃料をプルサーマル方式で燃やす原発もない。将来のMOX利用を念頭に置きながら、当面は、イモビライゼーションの研究を進めることになった。一方、セラフィールド原子力サイトには新しい長期保管庫が建設され、プルトニウムが保管されている。結局、将来、どう処分するかについては、まだあいまいだ。

 イモビライゼーションは「不動化」の意味。プルトニウムの粉末にカルシウム、チタンなどの酸化物を混ぜ、熱と圧力を加えてセラミックにして地中に捨てる。これならばプルトニウムを取り出せない。

「プルトニウムの価値はマイナス」

拡大プルトニウム廃棄の研究に使われる缶=NDA提供
 「MOX燃料としての利用をめざす。燃料にならない質の悪いプルトニウムを廃棄する。そのための研究を進める」

 英国の方針は、一見、廃棄研究を始める日本と同じに見える。しかし、内実は異なる。英国は「プルトニウムの価値はマイナス」と認識して政策を考えているからだ。 ・・・ログインして読む
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筆者

竹内敬二

竹内敬二(たけうち・けいじ) エネルギー戦略研究所シニアフェロー

エネルギー戦略研究所(株)シニアフェロー。元朝日新聞編集委員。科学部記者、ロンドン特派員、論説委員などを務め、環境・原子力・自然エネルギー政策、電力制度などを担当してきた。温暖化の国際交渉、チェルノブイリ原発事故、3・11などを継続的に取材。著書は、電力業界が日本社会を支配するような社会産業構造がなぜ生まれたのか、なぜ福島事故がおきたのかを描いた『電力の社会史 何が東京電力を生んだのか』(朝日選書、2013年)。

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