確認に時間が必要だが、老境数学者の存在感を示すインパクトあり
2018年10月16日
「複素変数を持つリーマンのゼータ関数の非自明な零点の実部はすべて1/2である」(右図)という言明と、解けたときの数学界に及ぼすインパクトに関する説明は残念ながら省略せざるを得ないが、とにかく21世紀の数学者にとって、これの解決が最大の夢であると言っても決して言い過ぎではない。この予想を、英国の「老」数学者マイケル・アティヤ(1929-)が解いたというニュースがつい最近ネット上に流れた。
アティヤ先生は幾何学や数理物理の分野で世界的に著名な数学者である。とはいえ、御年89歳。先ずは「ニュースは本当か」という疑念とともに、これまでも某数学者が解いたという噂が流れた後に、実は証明に間違いがあったということが度々起きていたこともあって、素直には受け取れないという感想を持ったというのが正直なところである。それほどにリーマン予想の解決は難しく、21世紀中は無理ではないかという空気も流れていたのだ。しかし、何せ世界中の数学者から尊敬されているアティヤ先生のことである。実際に解決した可能性は十分にあり得る。ただ、証明のチェックには時間が掛かるのが通常であるから、その成否についての判断は、現時点では保留せざるを得ない。
とはいえ、89歳で第一線の論文を書いたということ自体に筆者(70歳)は大きな刺激を受けた。実は、最近は老境に至っても現役研究者として活躍している数学者は多い。一昔前は、60歳(場合によっては50歳)を過ぎると研究から身を引く数学者が多く見られたが、最近筆者の周りには、70を過ぎても論文を書き続けている数学者が多数存在する。そのため、かく言う筆者も非才ながら、地道にでも研究を続けなければという「圧力」を感じているのである(実際のところ、自分が老いたとは思っていない、あるいは思いたくないという気持ちもある)。
「数学は若者の学問」とよく言われる。これは、
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