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グーグル誕生20年、日本の企業は何をしていた?

事業構成を比較してわかった「稼ぎ頭」の様変わりぶり

伊藤隆太郎 朝日新聞記者(西部報道センター)

 GAFAという流行語がある。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字だ。企業の価値を示す「時価総額」の世界ランキングで上位を占める四つの巨大組織は、いずれも米国に本社があり、国境を越えて世界中で事業を展開している。

わずか20年で世界を支配

 その製品やサービスは、すっかり私たちの暮らしに浸透した。もしグーグル検索が止まったら、iPhoneが消えたら、アマゾンが配達をやめたら……。どの1社が欠けても、日々の生活はかなりの影響を受けるだろう。「世界を支配する四騎士」に、私たちは牛耳られている。

ネット通販のアマゾンは、実店舗「アマゾン・4スター」も展開する=2018年9月、米ニューヨーク、江渕崇撮影
 筆頭格のグーグルは今年、ようやく20歳を迎えたばかり。GAFAはわずか20年で世界を変えてしまった。ネット通販のアマゾンが株式上場したのも、グーグル誕生の前年の1997年だ。アップルはこのころ倒産寸前で、命運を託されたスティーブ・ジョブズが経営に復帰している。フェイスブックはまだ影も形もない。創業者マーク・ザッカーバーグは中学生だったのだから。

 20年で様変わりした世界。では日本のハイテク企業はこの20年間、何をしていたのか? 大手電機メーカーを中心に、当時といまの有価証券報告書を読み比べてみた。すると日本企業もまた、自らの姿を変えようと奮闘し、会社の看板である「主力事業」をごっそりと入れ替えてきたことが分かった。

日本のメーカーも変わった

 大手電機メーカーは8社ある。大きく三つに分類される。「重電系」の日立製作所、東芝、三菱電機。「家電系」と呼ばれるパナソニック、ソニー、シャープ。そして「通信系」の富士通、NECだ。

日立製作所の売上高構成比の変化
 最大手は重電系の日立製作所で、いまの主力事業にあたるのは工場などのプラント建設や鉄道システム、発電所といった「社会産業システム」だ。これにコンピューター関連の「情報通信システム」が続き、3番手は半導体や自動車部品などの「高機能材料」となっている。

 だが20年前の日立では、圧倒的な事業主体はコンピューターだった。パソコンから汎用機までをカバーする「情報エレクトロニクス」事業で、売上げの半分以上を占めていた。冷蔵庫やテレビなどの「家電」にも勢いがあり、いまの主力である交通システムや産業システムを上回っていた。20年で大きな入れ替えを果たしたのだ。

家電系はもはや「家電」じゃない

東芝の売上高構成比の変化
 東芝も20年で変わった。いまの主力事業は「インフラシステム」で、売上げの3割を占める。上下水道やエレベーター、道路や鉄道の自動化機器などが主力製品だ。だが20年前はやはりコンピューターが会社の大黒柱。ブラウン管や半導体などの「電子デバイス・材料部門」も強かった。三菱電機も同じで、パソコンやプリンターで4割を稼いでいたが、現在は工場の自動化システムなどの「産業メカトロニクス」で3割を売り上げる。4月に就任した杉山武史社長は経営説明会で「強い事業をより強くする」と姿勢を示した。

パナソニックの売上高構成比の変化
 こうした「稼ぎ頭」の交代は、家電系でもはっきりしている。パナソニックは20年前、まだ松下電器産業と名乗っていた。電話機やファクス、パソコンといった「情報通信機器」が主力だった。半導体や乾電池などの「部品分野」がこれに次いだ。しかし現在、最大の事業は「オートモーティブ&インダストリアルシステム」だ。乗用車の運転支援システムや産業向けの省人化システムがいまの会社を支えている。つまり家電系といえども、重心はすっかり「家の外」へ飛び出している。

ソニーの「主力」はころころ交代

 ソニーはさらに変幻自在だ。

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