監督の「MMRワクチンは自閉症を引き起こす」という主張の荒唐無稽ぶりを検証
2018年11月13日
配給会社がこの経過をオープンにしたことで、監督が自分の主張に都合が良いように平気で事実を曲げる(別の表現を使えば「ウソをつく」)人であることが白日の下にさらされた。ワクチンの話は複雑だ。誰の言うことを信じていいのかわからない、と思う人も少なくないだろう。だが、今回の一件で、少なくともウェイクフィールド氏の言うことは信用できないことがはっきりしたと思う。
ウェイクフィールド氏は、かつて英国で医師として働いていた。1998年に自閉症とMMRワクチンの関連を指摘する論文を由緒ある医学雑誌「ランセット」に発表し、センセーションを巻き起こした。MMRワクチンとは、はしか、おたふく風邪、風疹の3つのワクチンを混合した生ワクチンで、日本ではDPTワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)の3種混合ワクチンに対して「新3種混合ワクチン」と呼ばれた。1989年から接種が始まったが、無菌性髄膜炎の多発が問題になり、93年に定期接種が中止された。以後は使われていない。このため、98年にびっくりする論文が出ても日本では「関係ない」とあまり関心を持たれなかった。
事態は2004年に英日曜紙「サンデータイムズ」が特ダネ記事を掲載して急転する。ワクチンメーカー相手に訴訟を起こした原告の弁護団からウェイクフィールド氏が多額の報酬を得ていたことが明らかにされたのである。その後に論文を精査したところ、多くのウソが混じっていたことが発覚し、ランセットは論文を撤回した。ウェイクフィールド氏は医師免許を剝奪され、その後米国に移り住んだ。
配給会社の資料によると、氏は米国で自閉症児の母で自閉症専門誌「自閉症ファイル」の編集長であるポリー・トミー氏とともに自閉症メディアチャンネルを設立。ここでドキュメンタリー映画を作り始め、テレビやラジオのインタビューも数多く受けるようになった。
2016年に完成した今回の映画は、自閉症の息子を持つロバート・デニーロがトライベッカ映画祭で上映しようとしたが、専門家の意見を聞いて取りやめた。ところが、その後49州で劇場公開されて約120万ドル(約1.3億円)の興業成績をあげたという。
映画では、
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