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続・ブレクジットを迎える英国の大学の苦悩

日本にとっては日英の関係を強化する好機

廣畑 貴文 英国ヨーク大学教授

大学はGDPの約3%を生み出すサービス産業

 引き続き、英国の大学を取り巻く環境を説明したい。ブレア政権は英国大学における留学生の割合を25%にする目標を立てた。すでに目標は達成され、現在は約3割を占めるまでになった。

 EUの学生の学費は現時点では英国の学生と同額だが、EU以外の留学生(日本人を含む)に対しては2割から5割程高く設定されている。英国では大学が国内総生産の約3%を生み出すサービス産業として意識されているので、EU域外からの留学生受け入れを熱心に進めている。これには研究費の不足を補填する意図もあり、英国全体では研究費の13%が授業料関連収入からの繰り入れであると言われている。

 動機はどうであれ、こうした多文化環境は講義や研究に活気をもたらしている。理系学科では半数近くが留学生という場合も多く、特に博士課程では半数以上が留学生という場合がほとんどである。異なる価値観を持つ学生が協力して研究を進められる環境は、刺激も強く適度な競争も存在し、成果中心の米国とは異なる雰囲気を醸し出している。

多文化環境が生み出す豊かな研究成果

 例えば、筆者が勤めるヨーク大学では学費収入の2割程度が中国からの留学生によるものである。留学生数でみると中国、ドイツ、ロシアが上位3カ国となっている。筆者が所属する電子工学科では修士課程在学生の9割近くが中国人留学生である。

拡大左は、筆者の研究室の集合写真=2016年3月撮影。英国人3名、中国人(香港を含む)3名、ルーマニア人2名、日本人2名、イラン人1名、韓国人1名。右は筆者の研究室風景。シンポジウム参加者に磁化測定装置の原理を説明中=2011年6月撮影

 EUからの留学生は学費収入の面からは英国大学にとっての利点は少ないものの、交換留学プログラムが「エラスムス」など数多く存在し、多くの留学生が訪れている。独仏などの大学は日本と同様に学部4年、修士2年、博士3年(医学部を除く)という制度であり、英国の学部3年、修士1年(取得せずに博士課程入学も可能)、博士3年という制度は、欧州からの留学生にとっても魅力的である。

 中国人留学生にとっては1年間で取得できる英語圏の修士号を持てば、帰国後に係長クラスで就職できる会社も多い。これは十分な魅力だろう。なお日本からの正課への留学生は数名にとどまり、ほとんどは短期で英語を学びに来る学生である。

 英国の大学から年間に出版される論文は約10万報を数え、世界第5位(2016年)につけている。日本は大学数が倍以上あるが、論文数は世界第6位(同)である。さらに ・・・ログインして読む
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筆者

廣畑 貴文

廣畑 貴文(ひろはた・あつふみ) 英国ヨーク大学教授

1995年に慶應義塾大学理工学部物理学科を卒業し、1997年に同大学院修士課程を修了後渡英。2001年にケンブリッジ大学物理学科博士課程を修了し、ポスドク研究員に。2002年から米国マサチューセッツ工科大学フランシスビッター磁性研究所に移り、2003年から東北大学工学部材料物性学科にてクレスト研究員、2005年から理化学研究所フロンティア研究システムにて研究員を務めた後、2007年にヨーク大学電子工学科講師、2011年准教授を経て2014年から現職。