約70年ぶりの漁業法改正案の特徴と問題点
2018年11月29日
これに参加する限り、改正の動き自体は自由民主党議員主導と思われる。しかし、実際に法案を作文する能力は水産庁の役人にある。月200時間を大幅に超える残業だったという声も聞こえてきた。改革したい議員の熱意と、過去に規制改革に批判的だった水産庁が作らされたものが、うまく機能するのか。水産庁の役人を呼んで説明会を開いても、自分で水産改革をやるという「覇気もオーラも感じられ」ない(濱本俊作氏)とまで言われている。対して、上記のG1海洋環境・水産フォーラムでは覇気とオーラが十分に感じられた。
改正案の特徴は、(1)現行の漁業法の目的から「民主化」を削除し、漁業の使命と持続可能性が目的に明記された(第1条)、(2)個別漁業権付与について、「地元漁協を最優先する」という現行規定を廃止し、「水域を適切かつ有効に活用している場合は、その継続利用を優先する」ことに改め、養殖への法人参入を容易にした(第91条、109条等)、(3)密漁対策を強化し、罰金の上限を200万円から3000万円に上げた(第189条)、(4)漁獲割当量(IQ)制度を導入し(第8条)、船舶等ごとに漁獲割当ての割合を設定し、その割合を船舶等ごとの漁獲実績その他を勘案して基準を定めた(第17条)、(5)漁業調整委員を公選制から都道府県知事の任命制に改めた(第138条)である。
今年5月に閣議決定された第3期海洋基本計画でも、沖合漁業等については「可能な限りIQ方式を活用」と明記されている。それを実行する漁業法の改正の動き自体は国連海洋法条約時代に即したもので、歓迎する。しかし、問題点も多い。
まず、漁業権付与の条件である「適切かつ有効」の評価手続きが不透明であり、かつ輸出を目指すと言いながら日本の養殖業が欧米の環境水準と乖離していることに対応した形跡が全く見えない(これについては改めて詳述する)。企業参入を容易にしようという改正だが、現状でも地元漁協と連携すれば、企業は参入できている。東日本大震災後、しっかり被災地にとどまった大企業もある。漁業権の継続の条件を「適切かつ有効に利用している」こととするのは賛成だが、その評価の際に意見を述べる漁業調整委員の公選制廃止はまったく賛成できない。
さらに、漁獲枠の配分方法が大問題である。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください