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日本の漁業の再生か、小規模漁業の切り捨てか

約70年ぶりの漁業法改正案の特徴と問題点

松田裕之 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

拡大漁業法改正案閣議決定直前に開かれたグロービスG1海洋環境・水産フォーラムで挨拶する堀義人G1代表=11月4日、主催者提供
 漁業法改正案が2018年11月6日に閣議決定され、15日に衆議院で審議入りした。成立すれば、1946年制定の漁業法を、約70年ぶりに大幅改正することになる。閣議決定直前の11月4日、一般社団法人G1(堀義人代表)が「G1海洋環境・水産フォーラム」を開催し、私を含む関係者や全国の漁業者ら約100名が参加し、熱心な議論が行われた。このフォーラムでは勝川俊雄東京海洋大准教授や小林史明衆議院議員らがパネル討論モデレーターを務めた。

 これに参加する限り、改正の動き自体は自由民主党議員主導と思われる。しかし、実際に法案を作文する能力は水産庁の役人にある。月200時間を大幅に超える残業だったという声も聞こえてきた。改革したい議員の熱意と、過去に規制改革に批判的だった水産庁が作らされたものが、うまく機能するのか。水産庁の役人を呼んで説明会を開いても、自分で水産改革をやるという「覇気もオーラも感じられ」ない(濱本俊作氏)とまで言われている。対して、上記のG1海洋環境・水産フォーラムでは覇気とオーラが十分に感じられた。

改正案の5つの特徴

 改正案の特徴は、(1)現行の漁業法の目的から「民主化」を削除し、漁業の使命と持続可能性が目的に明記された(第1条)、(2)個別漁業権付与について、「地元漁協を最優先する」という現行規定を廃止し、「水域を適切かつ有効に活用している場合は、その継続利用を優先する」ことに改め、養殖への法人参入を容易にした(第91条、109条等)、(3)密漁対策を強化し、罰金の上限を200万円から3000万円に上げた(第189条)、(4)漁獲割当量(IQ)制度を導入し(第8条)、船舶等ごとに漁獲割当ての割合を設定し、その割合を船舶等ごとの漁獲実績その他を勘案して基準を定めた(第17条)、(5)漁業調整委員を公選制から都道府県知事の任命制に改めた(第138条)である。

 今年5月に閣議決定された第3期海洋基本計画でも、沖合漁業等については「可能な限りIQ方式を活用」と明記されている。それを実行する漁業法の改正の動き自体は国連海洋法条約時代に即したもので、歓迎する。しかし、問題点も多い。

漁業枠の配分方法は沿岸漁業保護で考えるべき

 まず、漁業権付与の条件である「適切かつ有効」の評価手続きが不透明であり、かつ輸出を目指すと言いながら日本の養殖業が欧米の環境水準と乖離していることに対応した形跡が全く見えない(これについては改めて詳述する)。企業参入を容易にしようという改正だが、現状でも地元漁協と連携すれば、企業は参入できている。東日本大震災後、しっかり被災地にとどまった大企業もある。漁業権の継続の条件を「適切かつ有効に利用している」こととするのは賛成だが、その評価の際に意見を述べる漁業調整委員の公選制廃止はまったく賛成できない。

拡大定置網にかかったタイなどの水揚げ作業=2017年4月2日、鳴門市北灘町沖の播磨灘、長谷川大彦撮影

 さらに、漁獲枠の配分方法が大問題である。 ・・・ログインして読む
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筆者

松田裕之

松田裕之(まつだ・ひろゆき) 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

京都大学理学部および同大学院博士課程卒業(理学博士)、日本医科大学助手、水産庁中央水産研究所主任研究官、九州大学理学部助教授、東京大学海洋研究所助教授を経て 2003年より現職。GCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」リーダー(2007-2012)、日本生態学会元会長、日本海洋政策学会理事、個体群生態学会副会長。ヨコハマ海洋みらい都市研究会共同代表。

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