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発達障害児の支援とは、親への支援だ

通常クラスで約15人に1人、気軽に相談できる場に専門職を

赤壁 省吾 言語聴覚士

 NHKが11月から「発達障害って何だろう」というキャンペーンを始め、さまざまな番組で発達障害のことを取り上げている。それ以前からマスメディアでは大人の発達障害が報じられることが多くなってきており、このところ発達障害に対する認識は急速に広まっている。発達障害には、自閉症スペクトラム、学習障害、注意欠陥多動性障害の3つのタイプがあり、それらが重なっていることもある。


毎年4月2日に行われる世界自閉症啓発デーの徳島市での活動=2018年4月2日、徳島市・両国橋西公園、世界自閉症啓発デー徳島実行委員会提供
2017年の世界自閉症啓発デーの啓発ポスター=世界自閉症啓発デー徳島実行委員会提供

 小学校の通常クラスには「発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒」が6.5%いると言われ(2012年文部科学省報告)、これは約15人に1人の割合で在籍しているという計算となる。2005年には発達障害者支援法がスタートし、支援も加速しているが、支援の第一線にいる者としてまだ不十分だと思わずにはいられない。この問題は何より親に対する支援が大事であり、そのために関係者が力を合わせて市町村の子育て支援体制を整えていくように訴えたい。

発達障害バブル?

 今や「発達障害バブル」とも言われる。児童福祉法に定められている児童発達支援事業所、放課後等デイサービスといった事業所が2012年以降から急激に増え、発達障害に対応するというインターネット広告があちらこちらに見られるようになったからである。事業所も特色を出さなければ選ばれない時代になっている。

 早期に発達支援の療育が開始されることは大切なことである。そのためにも、こうした事業所が子どもの特性に配慮したサービスの質の維持・向上のために努力することが求められる。また、時代にあったサービスも考えていかなければならない。中には多くの事業所を併用し、1週間のスケジュールが埋まっているという慌ただしい日々を送っている子どもたちもいる。その背景には共働きで子育てと仕事の両立問題があることは言うまでもないが、そのうえ両親の介護も担っている場合もある。超少子化と高齢化が同時進行する日本では、従来の介護サービス、育児サービスだけでは対応しきれなくなっていることを認識する必要がある。

不安、自責、そして孤立する保護者

 発達を支援するということは子どもだけではなく保護者も支援することにほかならない。子どもが1歳であれば保護者も親として1歳であり、初めての入学式は子どもにとってピカピカの一年生であれば親もピカピカの一年生である。子育てはいつもわからないことだらけ。子どもと一緒に1歳ずつ歳を重ね失敗をしながら覚えていく。

 もし、発達に遅れがある場合は「あれ、どうしてみんなと遊べないのだろう?」など「うちの子は大丈夫かしら?」と不安にさいなまれ、「私の関わり方が悪い?もっと頑張らないといけない?」と自問自答の日々である。「もしかしたら、子どもに障害があるかもしれない?」と脳裏をよぎっても、それすら誰にも相談できない。そんなことを思うことにすら罪悪感を持ち、周囲から孤立感を更に強めてしまう保護者はいることだろう。

ライフサイクルに応じた発達障害支援の研修会=2017年5月4日、徳島市・徳島県障害者交流プラザ、とくしま発達しあわせネット提供

 そういった状況に加えて家庭の経済的貧困や保護者の健康状態の悪化も重なると子育ての困難さも増し、「なにもかも上手くいかない」と精神的に不安定になりやすい。こうした保護者のSOSを早期発見することが必要である。

 そのためには、健診や地域で気軽に保護者が相談できる場に発達障害に詳しい専門職が関わるのが望ましい。児童精神科医、小児科医を中心として言語聴覚士はことばの発達、作業療法士は遊びや感覚運動面の発達、理学療法士は姿勢や座位、歩行の発達、臨床心理士及び公認心理士は子どもの全般的な発達及び保護者の心理的サポートと、発達障害にかかわる専門職は多様だ。こうした関係者が保健師と連携し、市町村での丁寧な子育てサポート体制を整備・運営するようにしてほしい。そして、親同士が子育ての悩みごとを共有しあえる「ピア・サポート(当事者同士の支え合い)」が行える支援体制も必要である。

早期に保護者が支援機関につながることが大事

世界自閉症啓発デーの啓発活動=2018年4月2日、徳島市駅前、世界自閉症啓発デー徳島実行委員会提供
 発達障害を持つ子どもは、
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