メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

沿岸捕鯨再開は賛成だが、まず国内合意を進めよ

脱退の前にやるべきことをしなかった政府、専門家の声を聴く体制が必要

松田裕之 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

批判が大きいIWC脱退

拡大国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退に関する質問に答える菅義偉官房長官=2018年12月26日午前、岩下毅撮影
 日本は国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を2018年12月26日に表明した。全国紙5紙も多くの地方紙も、これを批判する社説を載せている。私は2016年に沿岸捕鯨再開を優先すべきと述べた。私は本件で政府に助言する立場にないが、沿岸捕鯨を再開したい気持ちは同じだ。なお、この場合の沿岸捕鯨とは日本の排他的経済水域(EEZ)内の捕鯨を指す。つまり沖合域も含む一方、南氷洋や日本のEEZ外の北太平洋地域は含まない。

 漁業法改正の時も感じたが、政府、官僚や政治家と、科学者や当事者との議論が足りない。国際法の専門家によると、IWCを脱退しても、国際機関の合意を得ずに沿岸捕鯨を再開するのは国連海洋法条約に抵触する恐れがあるという。脱退を決めた政治家たちはこのことを理解していたのだろうか。南極海調査捕鯨の是非をめぐって国際司法裁判所に訴えられた時も、2014年の判決前に国際法の専門家が敗訴を予測し、関係者に伝えたと聞いている。しかし、判決後に「敗訴は想定外」のような見解が関係者から出された。少なくとも国際問題については、専門家の諫言を聞かない態度では、何も解決しない。

日本の脱退でIWCの役割は終わるかも

拡大
 私は、脱退自体は選択肢として否定しない。しかし、多くの評論家が言うように、かつてIWCで「南氷洋調査捕鯨を中止する代わりに沿岸捕鯨を認める」という妥協案が出されたときに、日本は拒否した。IWCを脱退すればEEZ外での調査捕鯨は不可能になり、この妥協案以上の条件は望めない。だったら、まずこの妥協案を改めて日本から提案するのが先だろう。たとえ反捕鯨国が合意する可能性は少ないにせよ、提案することによって日本の政策転換を世界に知らせるべきだった。昨年のIWCで日本が提案した「商業捕鯨再開」は繰り返し提案しているものであり、新たな提案とは認識されなかったと思われる。

 日本のIWC脱退で、IWCの役割は終わるかもしれない。モラトリアム(商業捕鯨の一時停止)を ・・・ログインして読む
(残り:約1453文字/本文:約2299文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

松田裕之

松田裕之(まつだ・ひろゆき) 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

京都大学理学部および同大学院博士課程卒業(理学博士)、日本医科大学助手、水産庁中央水産研究所主任研究官、九州大学理学部助教授、東京大学海洋研究所助教授を経て 2003年より現職。GCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」リーダー(2007-2012)、日本生態学会元会長、日本海洋政策学会理事、個体群生態学会副会長。ヨコハマ海洋みらい都市研究会共同代表。

松田裕之の記事

もっと見る