宇宙膨張とは座標系の相似拡大のことだ
2019年01月29日
現在の宇宙年齢は138億年と推定されている。とすれば、我々が現在観測できる領域は、光が138億年かかって到達できる距離を半径とする球の内部に限られるはずだ。これを宇宙の地平線球と呼ぶ。
地球上での地平線が地球の果てに対応しているわけではないのと同じく、この宇宙の地平線球は宇宙の果てではなく、あくまで原理的な観測可能限界に過ぎない。にもかかわらず、そのあたりを省略して、宇宙の果て、などという怪しげな言葉で一般市民を惑わしている人々もいる。
私は決して怪しい人ではないので、実質的には宇宙に果てはない、との立場を正直に表明した『不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか?』(講談社ブルーバックス)という真面目な本を最近出版させて頂いた。そこでは、この地平線球の半径を138億光年としている。その上で、「より正確に計算すれば、この値の3倍強の470億光年となるのだがそれは全く本質的ではないので気にしないように」と、常日頃説いて回っている。
実際、本稿の担当者の方からもそう詰問された。「どうでもいい程度の話なのですよ」となだめておさめようとしたが、「なんであれ一度は正式な説明を受けた上で、確かにどうでもいい話だな、と納得したい」とのこと。これが本稿のきっかけである。言われてみれば、一般の方々に向けてこの話題を真面目に解説した記事を見たことはない。正確な説明には一般相対論が必要となるのでやや面倒くさいのだが、とりあえず計算過程は極力丁寧にごまかさず、別紙にまとめておく。その結果を直感的に理解していただけるよう試みたのが、以下の本文である。
地平線球の半径が138億光年でなく470億光年となる理由の本質は、宇宙が膨張しているから、である。ある有限の長さの紐を考えて見よう。その一つの端から出発した光が、もう一つの端にいる我々に到達するまでの所要時間が138億年だったとすれば、この紐の長さはその時間に光速をかけた値、すなわち138億光年になるはずだ。しかしこれは、宇宙が膨張していない場合の話である。
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