OECDの委員会が指摘する「国際的研究施設に必要な7つの事項」
2019年02月07日
私は、1990年前後に米国のSSC(超伝導超大型衝突型加速器)計画が持ち上がったとき、旧科学技術庁の国際課長だった。2011(平成23)年から6年間は経済協力開発機構(OECD)の「グローバルサイエンスフォーラム」という委員会の議長を務め、1国では支えきれない大規模研究施設にあり方についての議論をまとめた。それらの経験をもとに、ILCの問題を考えてみたい。
ILCは科学研究のための装置なので、この論議の出発点は先ず科学的意義、次に財政も含めた上での科学技術政策上の意義について判断していく必要がある。そのため、文部科学省は累次にわたり有識者会議を開き、2018(平成30)年7月、ILC計画の現時点での全体像をとりまとめた。
これにもとづき審議を依頼された日本学術会議は同年12月、「ILC計画は、今後の素粒子物理学が進む方向性に示唆を与える可能性がある、とされるところの想定される科学的成果が、それを達成するために要するとされる巨額の経費の主要部分を日本が負担することに十分見合うものである、との認識には達しなかった」、「現状で示されている計画内容や準備状況から判断して、250GeV ILC計画を日本に誘致することを日本学術会議として支持するには至らない。政府における、ILCの日本誘致の意思表明に関する判断は慎重になされるべきであると考える」との所見を発表した。これに対して、ILC関係者は、3月に東京で加速器関係の国際会議が開かれることもあり、日本政府が肯定的な態度を表明することを期待している。
今回のような大型研究施設の立地問題は、フランスに建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)の時もそうであったが、わが国では突然のトピックとして政府、科学界の一大案件となる。私が2017年まで議長を務めたグローバルサイエンスフォーラムでは、大規模研究施設について様々な観点から継続的に議論を進めており、2017(平成29)年12月には「国際的研究施設の有効性と持続可能性の強化に向けて」という報告書を公にしている。
じつは
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