温暖化防止は遂に成功するのか?
2019年02月22日
昨年12月ポーランドで行われたCOP24では、パリ協定を実行するための細則が作られた。しかし、その直前に公表されたIPCCの「1.5℃特別報告書」に盛り込まれた強い警告は無視した。本来ならそれを受けて新しい野心的な削減目標を合意するべきだった。
それが出来なかった中心的な理由は米国の否定的態度だ。トランプ大統領は周知の通りパリ協定から脱退すると宣言したが、実際の離脱は規則上2020年になる。既に離脱宣言をした国が、IPCCの警告に即して行動しようとする諸国の努力の邪魔をした。
去る2月5日、大統領の一般教書演説でも気候変動の危機には一言の言及もなかった。しかも選挙期間中、あれだけ強い議論をしていた石炭の復活にも全く言及がなかった。彼の強弁にもかかわらず、石炭の復活などは現実経済では始めから不可能なのだ。大統領は復活を夢見て投票した失業中の炭鉱労働者を失望させた。その一方で、石油・ガスでは世界一の生産国になったと強調した。明らかに温暖化問題などは眼中にないという姿勢だ。
しかしトランプ大統領の主張とは逆に、米国の政府当局は兼ねてから温暖化を強く危険視していた。昨年11月に連邦政府の13の省庁が共同して執筆し、発表した第4次気候変動評価報告書(The National Climate Assessment)は、温暖化が環境を破壊し、アメリカの経済を縮小すると強く警告していた。
また今年1月に発表されたダン・コーツ米国国家情報長官の「世界脅威評価」では、温暖化は全球的な安定への脅威であると認定した。それは資源への競合を激化させ、経済的困難を増大し、社会的不満を増大する。温暖化が進行すると世界情勢は不安定化し、アメリカの対応能力を破壊する危険があると警告している。
しかし、トランプ大統領はこの種の議論を全面的に無視している。温暖化の故に環境規制を強化したら、生産が低下し、規制のない外国に工場が移転し、失業者が増大する。そんなことをするつもりは無い。それよりも国内の化石燃料を最大限に開発し、雇用を生み出し、世界に輸出することで世界がエネルギーで米国依存を強めることの方が大事だ。こういう考えだからこの冬、米国を襲った酷寒を引き合いに出して温暖化など存在しないと公言した。そして科学者から「天気と気候を区別しろ」と注意を受けた。
IPCCのような世界的な科学者グループはもとより、米国の連邦政府全体が発した警告や国防総省や諜報機関の警告などはトランプ大統領に全く影響しなかったが、米国の温暖化政策に影響を与える潜在力が最近生まれてきた。それは昨年11月の中間選挙で民主党が下院で優勢になったことと関係している。
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