そしてインターネットが拍車をかけた
2019年02月20日
「フェイク(偽)ニュース」や「オルタ・ファクト(もうひとつの事実)」が世界を振り回している。最近の傾向と思われるだろうが、起源は1980年代のKGBあたりまで遡れるという。もともとロシアの情報謀略の要だった偽ニュース発信が、インターネットの普及で爆発的な効果をもたらした。以下、米国側の情報源に基づいて、整理する。
「エイズウィルスは黒人とゲイを殺すため、ペンタゴン配下の研究所が開発した」。このトンデモニュース、後でKGBの仕業とわかったが、80年代に最大級の成功を収めた。200本ものニュースやレポートが80カ国でリリースされ諸外国政府もこれを信じたため、米国のイメージと外交に打撃を与えた。後にゴルバチョフもこれを認め、時のレーガン大統領に謝罪するという一幕さえあった。
最近では、ヒューストンで大規模な反イスラム抗議行動と、それに対抗するデモの間で争いが起きた(2016年5月)。だがどちらの陣営も、ロシアがインターネット操作で仕込んだとは気づかなかった。
イラン核開発疑惑でも、ロシア発の偽情報で米側が踊らされた。ロシア以外でも、イランやミャンマー、パキスタンは、それぞれ政府が計画的に偽ニュースを流しているといわれる。今や「真実が靴を履く前に、嘘は世界を半分回っている」(マーク・トゥエイン)。インターネット上で拡散し、事実化(情報実体化)してしまう。
今でいうフェイクニュースを、ロシア諜報機関では「偽情報(Disinformation)」と呼んだ。秘密裏にメディアに流される偽ニュースで、活動の中で実は大きな比重を占めていた。KGBメンバーは全員(若き日のプーチン大統領も含めて)そうしたアイデアの創出を義務づけられていた。偽ニュース・偽文書の専門部署が百万ドルの年間予算を取っていた。
1950年代からロシアは米国を偽ニュースで攻撃してきたが、米国は事の重大さに長らく気づかなかった。レーガン政権になってはじめて調査グループを創設し、実態が明るみに出た。
たとえば先の「エイズウィルス」ネタは世界を席巻したが、語順分析などからロシア語のネイティブによるものと推定されている。それをまずインドなど低開発国の英語ニュースから流し、ロシアのメジャーなメディアで採り上げられた。さらにそれを西側メディアが引用の形にせよ報道してしまった(CBSら米国の主要ネットワークが追随)。
偽ニュースにはノウハウがある。成功した実例から「逆エンジニアリング」をすることによって、専門家たちは以下の7点を見出している。
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