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辺野古の新基地建設は必ず頓挫する

フェイクによって政治を強行する安倍政権の時代錯誤

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 毎月勤労統計の不正問題で日本の政治に激震が走った。2月5日の衆院予算委員会で厚労相が2018年1〜11月の平均の実質賃金の伸び率がマイナスであったことを認め、野党は「アベノミクス偽装」だと追及した。中央省庁が2017年にも377統計の一斉点検を実施し、約4割の138統計で不適切処理が確認されていたことが明らかになったが、毎月勤労統計の不正が浮上しなければ隠されたままであったろう。モリカケ疑惑で今や隠しようがなくなった日本の政治のフェイク(うそ)ぶりが止まらない。それはここ沖縄でも同様である。

安倍首相のNHK「日曜討論」問題発言

 沖縄では、昨年8月31日、その数週間前に急逝した翁長前知事の遺志を継いで、謝花副知事が辺野古新基地建設にかかる埋め立ての承認を撤回した。しかし国は、民間になりすまし、防衛大臣が行政不服審査請求を内閣のお仲間の国交大臣に対して行い、国交大臣は昨年10月30日に撤回処分の執行停止を行った。これを受けて沖縄防衛局は11月1日に工事を再開したのである。かねてより安倍首相は「沖縄の皆さんの気持ちに寄り添っていく」と言っていたが、辺野古新基地NOという県民の声を一切聞かず、昨年12月14日に辺野古沿岸海域2-1への土砂投入を強行したのだ。

安倍晋三首相が出演した1月6日放送のNHK「日曜討論」から
 その安倍首相は辺野古新基地建設について、本年1月6日のNHK日曜討論において、「土砂を投入するにあたって、あそこのサンゴについては、これは移しております」と発言した。しかし現在土砂が投入されている辺野古側の海域2-1からサンゴは移植されていない。

 また安倍首相は「砂浜の絶滅危惧種は砂をさらって別の浜に移す」とも発言したが、これまでにそのような事実はない。一国の首相がフェイクの答弁で工事強行を正当化しようとする由々しき事態である。そもそもサンゴや他の生物を移動・移植することにより自然の生態系が復元することはなく、移植は環境保全措置となり得ないのだ。

ついに認めた辺野古の軟弱地盤

 また安倍首相は1月30日の衆院代表質問で、大浦湾の埋め立て予定海域に軟弱地盤が存在し、改良工事が必要になるとの考えを政府として初めて表明した。沖縄県が埋め立て承認を昨年8月に撤回するに当たって最大の理由として掲げていた問題の存在を、撤回から5カ月後にようやく政府が認めたのである。

 この問題を隠して工事を強行してきたことは、不正の毎月勤労統計でアベノミクスの成果を謳いあげるのと何ら変わらないフェイクによる政治そのものである。

軟弱地盤があり、地盤改良工事をする場所
 沖縄防衛局は地質調査船ポセイドンで大浦湾の工事予定海域の地質調査を2014〜16年に実施してきたが、沖縄平和市民連絡会の土木技師北上田毅氏は情報公開請求で2018年3月にこの資料を入手し、軟弱地盤が海面から約70メートルの深さの層まで達していることを知ったのである。「マヨネーズのような」と称されるこの軟弱地盤の改良工事は超難工事であり、工事は長期化し、工費も多額となる。工事で発生する濁りなどによる大浦湾の自然環境への影響も甚大だ。

 このことから沖縄県は、前述のように昨年8月、承認を撤回したのである。加えて県は、工費は政府が言ってきたような2400億円ではすまず、10倍以上の2兆5500億円を要し、工期も13年はかかるであろうと批判した。

技術的に不可能な地盤改良

 政府の地盤改良計画は、大浦湾の約65ヘクタールの海域に砂杭(サンドパイル)約7.6万本を水深70メートルまで打ち込むというものであった。国内に現在19隻しかないサンドコンパクション船を11隻同時に辺野古新基地建設に投入するという極めて非現実的な計画である。しかしここにきて、政府にとってまさに決定的に「不都合な真実」が新たに明らかになった。

軟弱地盤が最深で90mにもなることを報じた沖縄地元紙
 沖縄防衛局はその後も大浦湾の土質調査を続けていたのだが、軟弱地盤がさらに20メートルも深い海面から約90メートル(水深30メートル、地盤60メートル)の層にまで及んでいることが分かったのだ。水深70メートルを想定していたのが更に20メートルも深くなったのである。国内での地盤改良工事の実績は水深50メートル程度までであり、しかも砂杭を打ち込むサンドコンパクション船は深度70メートルまでしか対応できない。つまり、大浦湾の地盤改良は技術的に不可能であることが判明したのである。
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