同じ物理でも分野が違えばチンプンカンプンの状況を打破してきた30有余年
2019年03月05日
物理科学の分野とはたんに素粒子物理学、物性物理学、物理一般物理学、流体プラズマ物理学という純粋物理学のみならず、宇宙天体物理学、応用物理学、地球物理学、生物物理学、医療物理学、化学物理学、物理教育など広い分野をカバーするものです。
現代の物理科学の分野は19世紀末から急速に、とんでもなく急速に発展してきました。日本物理学会の発表会に出かけても隣の部屋に紛れ込むと、発表の内容はチンプンカンプンでまるで知らない外国の学会にまぎれ込んでしまった感じがしてしまうのです。
学会誌でもそうです。自分の専門分野はともかく他の専門分野ならさっぱり分からないので、月々送られてくる学会誌は学問記事はそっちのけ、ただエッセイなどを読んで投げ出す始末でした。1980年代初めにこうしたことを嘆いていたのは私だけでなく、後に文部科学大臣を務めた当時の物理学会長有馬朗人氏も同じでした。有馬会長は私を出版担当理事に指名して物理学会誌をもっとやさしくするよう指示しました。
私は早速、次々と送られて来る原稿を読んで「私はさっぱり分からない。分かるように書いて欲しい」とはねつけました。執筆者は驚いたでしょう。せっかく書いたものを書き直せとは、と。中には「数年前に書いた原稿と同じ程度ではないか。いまさらやさしく書き直せとは何事か」と怒り出す人も出る始末。
このままでは原稿がなくなり学会誌が出版できなくなる心配も出てきました。やむなく難しい原稿に多少手を加えた程度でお茶を濁す「従来路線」に戻るしかなかったのです。そうこうしているうちに私の理事の任期も切れました。この騒動の背景には
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