文科省は「関心を持って国際的な意見交換を継続」、球は再び学術会議へ
2019年03月20日
日本のお家芸「玉虫色の表明」に見えるが、これは海外からそう見えるという話。国内的には文科省は明確に「学術会議での議論が必要」と球を学術会議に投げ返した。「わが国の科学者の代表機関」である学術会議がまとめる「マスタープラン2020」の重点計画にILCが入るかどうか。今後の焦点はそこに移った。
ここまでの流れを簡単に振り返ろう。ILCは建設コストが約8000億円と試算されている超巨大プロジェクトである。直線型の加速器を地下に造って、電子と陽電子を衝突させる。日本に設置することを前提に世界の物理学者が協力して設計活動を進めてきており、2013年にICFAの下部組織が最初の技術設計書を発表した。それ以降、日本政府が正式に誘致を表明するかどうかが注目されてきた。
2013年:文科省研究振興局長が学術会議に審議依頼。学術会議は「諸課題の検討を行うために必要な調査等の経費を政府においても措置し、2~3年をかけて、当該分野以外の有識者及び関係政府機関も含めて集中的な調査・検討を進めること」を提言した。これを受けて文科省は「有識者会議」を設置して検討を進めた。
2017年:ILCの衝突エネルギーを500GeVから250GeVに変更する見直し案をICFAの「リニアコライダーコラボレーション(LCC)」が発表。
2018年:文科省の「有識者会議」は活動終了、再び局長が学術会議に審議依頼。学術会議は12月に「日本誘致を支持するには至らない」と答えた。
こうして、冒頭の文科省局長の意思表明に至るわけである。文科省は誘致を表明しなかったが、「誘致しない」と言ったわけではなく、国際協議の続行を宣言。「国内の科学コミュニティの理解・支持を得られるかどうかも含め、正式な学術プロセス(日本学術会議が策定するマスタープラン等)で議論することが必要である」と述べた。簡単に言えば、学術会議に差し戻し、というか、下駄を預けたのである。
ここで登場した「正式な学術プロセス」なるものが明確な形となってきたのは、実はここ10年ほどに過ぎない。日本学術会議は、
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