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新基地建設という「生命大量絶滅工事」

ガラパゴスでよみがえった絶滅種と、辺野古で死に瀕する生き物たち

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 2月19日付けの朝刊各紙は、世界遺産ガラパゴス諸島の最西端に位置するフェルナンディナ島で100年以上も生息が確認されていなかったゾウガメの一種が発見されたと報じた。朗報である。

 学名はGeochelone nigra phantastica。生きているフェルナンディナゾウガメが確認されたのは1906年が最後とのことであるから、実に113年ぶりの発見である。学名通り、まさにファンタスティックである。『世界遺産の登録に向けた仕切り直しの前に』で述べた通り、筆者はエクアドル政府に招かれて二度、かの地を訪ねたことがある。沖縄の自然保護の観点からもガラパゴスの自然保護にはとりわけ関心がある。

今や、生物の主たる絶滅原因は人間

 ガラパゴス諸島を代表する生物といえばゾウガメである。もともとGalápagoとはスペイン語で鞍を意味し、鞍の形の甲羅を持つゾウガメが「ガラパゴ」と呼ばれ、彼らが棲む島々がガラパゴス諸島と呼ばれるようになった。ガラパゴスのスは複数形のスで「ゾウガメたち」の意である。

拡大火山島のフェルナンディナ島。すぐ東側にも直径10kmの火口を持つダーウイン火山が見える
 ガラパゴスゾウガメは、正式に名前がついた15の亜種に分類されるが、このうち4亜種は既に絶滅し、現在では11亜種が存在するとされていた。それが12亜種になったのである。絶滅の主たる原因は、18世紀に鯨油を入手するため南氷洋に出漁していた捕鯨船の乗組員たちが生きた食糧として大量に捕獲して船倉に積み込んだことにある。しかしフェルナンディナ島のゾウガメの場合は、おそらく火山の噴火が主因で絶滅したのではと見られていた。フェルナンディナ島は典型的な火山島で、ラ・クンブレ火山(頂上火山)が2〜3年おきに噴火を繰り返しているからだ。

 ガラパゴス諸島はハワイ諸島や小笠原諸島、大東諸島と同様に、かつて一度も大陸と陸続きになったことのない海洋島である。フェルナンディナ島の周辺の海底下にはガラパゴスホットスポットがあり、このホットスポットから絶え間なくマグマが噴き出して、次々と島々を形成してきたのである。そしてこれらの島々は時とともにナスカプレートに載って東南東へ移動し、やがて南米プレートの下に沈みこんでいく。つまりガラパゴス諸島の最西端に位置するフェルナンディナ島は一番若い島で、生まれてまだ50万年しか経っていないのだ。

拡大イサベラ島にあるゾウガメ人工繁殖センターでの食事風景(筆者撮影)
 現代では捕鯨船の乗組員による捕獲はないが、ガラパゴス諸島には野生化したブタやヤギが数多く生息しており、彼らがゾウガメの卵を食べてしまう。人間が持ち込んだ外来生物がゾウガメの生存にとって最大の脅威なのだ。そのため、ゾウガメの繁殖はイサベラ島にある人工繁殖センターで行い、一定程度の大きさになってから生まれ島に戻している。

ついに温暖化で消え去る哺乳類も

 朗報に喜んだ2日後、今度は悲報に接することとなった。2月21日付け新聞各紙は、オーストラリア北部沖にある世界最大のサンゴ礁のグレートバリアリーフの島に生息していたネズミの一種が絶滅したことを政府が発表したと報じたのである。この島は面積約5ヘクタール、海抜約3メートルで気候変動の影響を受けやすく、海面上昇により繰り返し浸水していたという。研究者は、海面上昇で生息地が奪われたのが原因とみており、地球温暖化の影響で絶滅が確認された初めての哺乳類だとしている。 ・・・ログインして読む
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筆者

桜井国俊

桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。

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