福島の汚染土と辺野古の埋め立て土砂から、人と大地の関係に思いをめぐらす
2019年03月19日
福島原発事故による汚染土と、辺野古のサンゴ礁の埋め立て土砂。いずれも、その取り扱いには異論があり、関係者の考えが交錯し、合意から遙かに遠い状態にある。
フレコンバックに入った除染廃棄物の仮置き場=福島県川俣町山木屋地区、筆者撮影
辺野古沿岸で進む埋め立て工事=沖縄県名護市、堀英治撮影、朝日新聞社機から福島原発事故によって環境中に放出された放射性セシウムは広く環境を汚染した。森林や草地、農地ではまず植物に付着したものの、時間とともに重力に従って地上から下方へ移動し、8年たった現在では、そのほとんどが土壌の表層に集積している。土壌では粘土鉱物や腐植が放射性セシウムを強く吸着しているので、雨や雪による水が土壌を通過しても深い層には移動しない。このことは、幸いなことに放射性セシウムによる地下水汚染の可能性が低いことを意味している。
水田から剝ぎ取られた状態の除染廃棄物=福島県伊達市、筆者撮影
人目につかない奥地に置かれた除染廃棄物=福島県川俣町山木屋地区、筆者撮影私は、土壌の微生物や動物といった土壌生物の多様性や働きについて長年調べてきた。土壌生物が環境や植物などと相互に作用し、植物やそれを食べる動物の動態に深く影響していることがわかってきたのは、最近の生態学で起きた大きなパラダイム変換である。私達は目に見える植物や地上の動物だけを見て、自然の仕組みを理解しようとしてきた。しかし、Hidden Half(見えない半分)と呼ばれるように、植物の体の半分は根として土壌に伸びており、土壌には陸上動物の10倍以上の重さの土壌動物、その10倍以上の重さの微生物が棲息している。現在では、植物の挙動を理解するために、一緒に土壌生物の動態を調べることが基本となりつつある。
除染農地の段面。客土のため、表層(20cm)の方がそれより下層よりも有機物が少なく、明るい色に見える=福島県飯舘村、筆者撮影土壌生物、特に微生物は簡単には移動ができない反面、長い時間をかけてその場の気候、地質、植生の影響のもとに適応してきた。さらに、「土づくり」というように、農家がさまざまな管理を時間をかけて行うことで、その場所特有の土壌となった。もし、
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