移入期が1千年さかのぼる可能性、歴博も展示をリニューアル
2019年03月25日
美術ファンにはお決まりの作品識別法のひとつだが、古い絵巻や浮世絵に「猫をつれた女性」が描かれていれば、それはほぼ間違いなく女三宮である。「源氏物語」に登場する重要人物だ。
この印象深いエピソードにも支えられて、「猫は平安時代から飼われていた」という理解は広く共有されてきた。源氏物語では、当時はまだ珍しかったはずの猫を飼っていたということが、光源氏の正妻という女三宮の高貴さの暗喩にもなっている。
そしてこれまでの歴史学や考古学でも、飼い猫が日本に登場するのはこの平安時代ごろと見られてきた。文献での初出は、平安初期に書かれた最古の説話集「日本霊異記」とされ、死後に猫へと生まれ変わる人物が描かれる。実際に猫を飼っていた記述は、その少し後の宇多天皇の日記が最初という。
絵画のなかに姿を見せるのも、やはり平安時代の「信貴山縁起絵巻」が初めてとされる。実際に骨が出土するのも、これまでは8〜10世紀が最古だった。
ところが最近、この時代がいっきに千年もさかのぼりそうな発掘と分析が進んだ。国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)は3月19日、館内の「先史・古代」展示室を全面的にリニューアル。水田稲作が始まる弥生時代の高床倉庫に、2匹の猫の像を置いた。さながら「日本猫史」の大転換だ。
新発見は2008年以降だった。長崎県の離島、壱岐島のカラカミ遺跡から猫らしい骨が見つかり、奈良文化財研究所などで鑑定が進められた結果、ツシマヤマネコのような野生ではなく、人に飼われたイエネコらしいこと分かった。その後の2011年調査の成果も加わって、骨がイエネコであることや生息時期が紀元前2世紀ごろであることがほぼ確実になってきている。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください