世界標準に遠く及ばず、持続可能性の視点も欠如
2019年04月05日
3月6日付けの沖縄の地元新聞は、沖縄防衛局が石垣島での陸上自衛隊駐屯地建設に向けた造成工事に本格着手したことを一斉に伝えた。島民は水源となっている宮良川への影響を懸念し、事前の環境影響評価(環境アセス)の実施を求めていたが、その声は無視された。各紙は「アセス逃れ」として、着工を厳しく批判している。
そこで沖縄防衛局は頭を抱えたのであろう。この工事の着手が4月1日以降となると、昨年10月に改正された県環境アセス条例に基づいて環境アセスの実施が求められる。すると建設が数年は遅れることとなる。これを避けるため、着工を急いだに違いない。まさにアセス逃れである。
まさに、日本は「環境アセス後進国」である。日本の環境アセス制度は、国際標準にはるかに及ばない。そして、そのことを誰の目にも明らかにしたのが、辺野古アセス裁判だった。
2月22日に「辺野古の新基地建設は必ず頓挫する」で述べた通り、日本のアセス法では、方法書・準備書に対して市民は意見を述べることができる(第8条・第18条)としている。また第8条第1項は、「方法書について環境の保全の見地からの意見を有する者は(中略)、事業者に対し、意見書の提出により、これを述べることができる」とし、第18条第1項は準備書について同様に規定している。
この判決は、日本のアセス制度の到達レベルの低さを示すものだ。悲しいことに日本のアセスは国際標準に達していないのである。
ここでいう国際標準とは「環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における市民参加、司法へのアクセス条約」(環境市民参加条約)のことだ。1998年6月25日にデンマークのオーフス市で開催された「第4回欧州のための汎欧州環境閣僚会議」で採択され、オーフス条約とも呼ばれている。2012年10月30日現在、ベルギー、デンマーク、イギリス、フランス、EUなど、45の国と地域が批准している。
そもそも日本のアセス制度は、出発時点から世界に大きく遅れてきた。
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