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イエローベスト運動と温暖化問題(下)

「地球にやさしい」から税金や財政へ。議論の深化を期待

明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

 イエローベスト運動と環境保全運動との関係だが、1月27日には、フランス全体で温暖化問題に対するデモもあって、パリでも1万人近くが集まった。隣のベルギーでは、1⽉から週1回、Fridays for Futureと呼ばれる⾼校⽣が授業に出ないで、温暖化対策強化を求めるデモをしており、1月31日には各地で3万人以上が参加した。

毎週末に繰り広げられるイエローベストの街頭デモ=2019年1月26日、フランス西部の街アンジェ拡大毎週末に繰り広げられるイエローベストの街頭デモ=2019年1月26日、フランス西部の街アンジェ
 イエローベスト運動と環境保全運動とが合体したようなデモもあり、両者の連携は必要と考える人は多いと思われる。パリでの温暖化デモに参加した人の中にもイエローベストを着た人はいた。ただ、イエローベスト運動と環境保全運動を一緒にすべきではないと思う人がいるのも事実で、私が参加した地方のデモで、そんな対立を垣間見た。

 また、これは日本でも言えることだが、一般的な身の回りの環境問題(例えば、水や大気や食の安全など)と温暖化問題との違いが、一般市民には十分に認識されていない感じはあった。

 運動に参加している人の要求は、基本的に経済的なものが中心である。具体的には、マクロンが進めている新自由経済的な政策(大企業やお金持ち優遇)に反対している。税制改革の一環として昨年、富裕税(130万ユーロを超える純資産に対する0.5〜1.5%の累進課税)を廃止したことにも大きな反発が起きた。温暖化対策は重要なものの、その経済的負担を低所得者だけが被るのは不公平という認識が強くある。

アンジェのデモで、ベストには「あいつらには数(カネ)がある。俺たちには数(仲間)がいる」と書いてあった。拡大アンジェのデモで、ベストには「あいつらには数(カネ)がある。俺たちには数(仲間)がいる」と書いてあった。
 一方、マクロンは「人件費や法人税などが高いとフランスに投資が来ない」「炭素税は温暖化対策やエネルギー転換に不可欠」「低成長と高失業率で苦しむフランスを変えるには大胆な税制改革が不可欠」と主張する。投資環境や自然環境を良くするための合理的な政策を断行しているだけと言い、議論はかみあっていない感があった。

 マクロンが優秀なのはみな認めるものの、傲慢(ごうまん)な物言いを時々するのも確かで、それと強圧的に見える手法が、取り残されていると思う人たちに嫌われている。また、デモ参加者で破壊的な活動をする人の多くは、パリ以外から来ていると言われ、中央と地方との対立という側面もある。さらにマクロンの環境政策や温暖化政策は見せかけ、というイメージもある。これには、昨年、環境大臣ニコラ・ユーロが、マクロンへの失望から辞任したことも影響しているようだ。

 面白いことに、「日本から来ている」とデモの参加者に言うと、「お金の亡者のゴーンを ・・・ログインして読む
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筆者

明日香壽川

明日香壽川(あすか・じゅせん) 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

1959年生まれ。東京大学工学系大学院(学術博士)、INSEAD(経営学修士)。電力中央研究所経済社会研究所研究員、京都大学経済研究所客員助教授などを経て現職。専門は環境エネルギー政策。著書に『脱「原発・温暖化」の経済学』(中央経済社、2018年)『クライメート・ジャスティス:温暖化と国際交渉の政治・経済・哲学』(日本評論社、2015年)、『地球温暖化:ほぼすべての質問に答えます!』(岩波書店、2009年)など。

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