ボーイング737連続墜落事故の背景にあるもの <上>
2019年05月07日
米ボーイングの最新鋭ジェット旅客機737MAXが昨年10月にインドネシアで、今年3月にエチオピアでと相次いで墜落した。最大の売れ筋機の減産と出荷停止で同社の収益は悪化。米国のGDP(国内総生産)を押し下げるのではないかと予想される騒ぎになっている。
航空機は機首が上を向きすぎると、翼の周りの空気がはがれ、失速する。翼に受ける空気の流れで生じる揚力で航空機は宙に浮いていられるのだ。流れが止まれば落ちる。失速を防ぐには、機首を下げるのと同時にエンジンのパワーを上げて推力を増す。空気の流れが戻れば墜落を免れる。MCASは角度の上がりすぎをセンサーが検知すると、自動的にこの回復操作をする失速防止システムだ。
様々なメディアで報道されている2件の事故のストーリーはこうだ。離陸後の上昇中に、センサーに狂いが生じ、角度が上がりすぎという間違った情報に基づいてMCASが作動。MCASの指示で機首を下げようとするコンピューターの自動制御(オートパイロット)と、機首を上げてそのまま上昇しようとするパイロットが「けんか」になり、墜落した。
事故を誘発するようなシステムが導入されたのはなぜか。端的に言えば、「経済性を追求するために生じた安全上の問題を自動制御のソフトで補おうとした」。そして、それが失敗だった。
では、なぜ、そんな無理をしたのか。ライバルに水をあけられて焦ったというのがもっともありそうな理由だ。
737MAXの売りは、従来機の737NGに比べて省エネルギーであること。省エネを実現する手段の一つとして、燃費のいい新型エンジンを使った。ところが、このエンジンは従来機で使っていたエンジンより口径が大きい。そのまま付けると、エンジンと地面の間に余裕がない。そこで、取り付け位置を前方寄りの高めにずらした。その結果、重心の位置がずれ、機体のバランスが崩れて、機首が上向きに上がりやすくなった。そこで、MCASでその欠点を補おうとしたのだ。
実はこれとよく似た事例が過去にある。
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