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またも基地周辺で水道水の汚染物質を検出

いつまでも変わらない米軍の隠蔽体質と、日本政府の腰の引けた姿勢

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 沖縄県の嘉手納基地と普天間飛行場の周辺の湧き水や河川水で、高濃度のPFOSがまたもや検出された。4月25日付けの沖縄の地元紙が報じた。

 PFOSは、ストックホルム条約(難分解性の有機汚染物質POPsに関する条約)で規制されているフッ素系の合成界面活性剤であり、発がん性が疑われている有機汚染物質である。日本では化審法で製造・輸入が禁止されているものの水道水質基準の設定は見送られているのに対し、米国環境保護庁(EPA)は生涯健康勧告値を1リットル当たり70ナノグラムと定めている。

輸送機MV22オスプレイが数多く駐機する普天間飛行場=2109年1月、沖縄県宜野湾市、小宮路勝撮影
 今回、嘉手納基地周辺および普天間飛行場周辺の湧き水で検出された最高値はそれぞれ2100ナノグラム、1500ナノグラムといずれもEPA勧告値を大幅に超過している。PFOSは航空機の洗浄剤や消火剤として基地内で日常的に使用されているとみられており、それが基地内の土壌を汚染し、そこを経由して流れてくる地下水・表流水を汚染していると推測されている。

 この問題は3年前から始まっていた。2016年1月、沖縄県企業局が北谷浄水場の水源である比謝川の支流の大工廻川で米国の水道水暫定基準を大幅に超えるPFOSを検出したと発表した。北谷浄水場は、北谷、宜野湾、沖縄、那覇、浦添、北中城、中城の7市町村に給水しており、給水人口は沖縄県民の半分の70万人に及ぶ。

 日米地位協定が壁となってこの3年間、汚染原因の特定が全く進まず、根本的な対策を講じるに至っていないことが浮き彫りになった。

日米地位協定第3条の壁

 問題の根源は日米地位協定第3条にある。同条は米軍の排他的管理権を定めており、基地内への立ち入り、国内法の適用を阻む強大な米軍特権である。施設・区域は日本国内にあり、属地的には国内法が適用されるはずだが、外務省機密文書を分析した琉球新報社編「日米地位協定の考え方・増補版」によれば、外務省は「国内法の適用は、米軍の管理権を侵害しない形でおこなうこととされている」との姿勢だ。

沖縄県の嘉手納基地と普天間飛行場
 米国に対して腰の引けた日本政府のこの姿勢は、日本と同様に第二次世界大戦の敗戦国であるドイツとイタリアにおける対米地位協定のあり様と対比すると異様でさえある。冷戦終結後、ドイツでもイタリアでも米軍基地に国内法を適用するようになってきていることが、沖縄の地元紙、沖縄県、日本弁護士連合会などの別個の調査で明らかになってきているからだ。

 実は、日米地位協定第25条に基づき設置されている日米合同委員会は1973年、自治体による現地司令官への基地内立ち入り申請権を認める合意をしている。しかしこの合意文書の「環境に関する協力について」が公表されたのは30年後の2003年1月だった。なぜ公表が遅れたのか。2003年1月30日の参院予算委員会で川口順子外相はその理由について「約30年前のことでございまして、よく分かりません」と答えている。

米軍嘉手納基地沿いを流れる大工廻川=2018年11月16日、沖縄県沖縄市、伊藤和行撮影

 外務省が公表した73年合意の「仮訳」には「地位協定により提供された施設・区域を米軍が使用する際に生じうる汚染について適切な注意を払い」「米軍としては、汚染のない社会の構成員となる意志がある」と記し、米軍が汚染防止に努めることを高らかに宣言している。

 しかし73年合意を公表した2003年のあとも、米軍に対する日本政府の腰の引けた姿勢は一向に変わっておらず、それを良いことに米軍の隠蔽体質はそのまま放置されている。

沖縄国際大の米軍機墜落事件

 この隠蔽体質の放置が明らかになったのは、2004年8月13日の沖縄国際大学への米軍機墜落事件だった。

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