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グリーン・ニューディールはアメリカを変えるか?

元バーテンダーで29歳の女性下院議員、AOCが旋風を起こす

明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

 アレクサンドリア・オカシオコルテス(Alexandria Ocasio-Cortez)。略称AOCと呼ばれる29歳の彼女は、昨年、米国における最年少の下院議員となった。プエルトリコ系で、ウェートレスやバーテンダーの仕事をしていて、まだ大学の学生ローンを返しているらしい。

 起業家らが集まる「サウスバイ・サウスウェスト」に登場したオカシオコルテス下院議員=2019年3月9日、テキサス州オースティン、江渕崇撮影  拡大 起業家らが集まる「サウスバイ・サウスウェスト」に登場したオカシオコルテス下院議員=2019年3月9日、テキサス州オースティン、江渕崇撮影
 2019年2月、彼女が他の米民主党の議員グループを巻き込んで公表した温暖化対策の決議案「グリーン・ニューディール」は、米国のみでなく、世界中のエネルギーや温暖化問題に関わる人間の注目を集めている。ひょっとしたら、アメリカが変わるかもしれないからだ。

 決議案は、再生可能エネルギー関連インフラへの投資を拡大し、化石燃料に依存する経済社会システムの転換を目指している。2030年までにエネルギー需要の100%をクリーンエネルギーでまかなうなどの数値目標を持ち、雇用、格差などの問題と連係させているのも特徴だ。

 このグリーン・ニュー・ディールの政治的インパクトは非常に大きく、民主党の大統領候補のほぼすべてが支持している。彼女がナレーションをつとめた〝A message from the future(未来からのメッセージ)〟という7分間のグリーン・ニューディール紹介ビデオがあり、これがわかりやすく、かつ非常にアーティスティックなものになっている。

批判で「炎上」する一方、擁護する学者も

 アレクサンドリア・オカシオコルテスやグリーン・ニューディールへの批判は多くあり、日本風に言うと、「炎上」しまくっている。前述のビデオが流された直後には、たくさんの批判ビデオがYoutubeにアップされた。

 その中には、

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筆者

明日香壽川

明日香壽川(あすか・じゅせん) 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

1959年生まれ。東京大学工学系大学院(学術博士)、INSEAD(経営学修士)。電力中央研究所経済社会研究所研究員、京都大学経済研究所客員助教授などを経て現職。専門は環境エネルギー政策。著書に『脱「原発・温暖化」の経済学』(中央経済社、2018年)『クライメート・ジャスティス:温暖化と国際交渉の政治・経済・哲学』(日本評論社、2015年)、『地球温暖化:ほぼすべての質問に答えます!』(岩波書店、2009年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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