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南の島が始めたプラスチック文明との戦い

プラスチック袋の使用禁止令に取り組むサモア

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 南の島国サモアから便りが届いた。プラスチック文明に挑む本格的な戦いを始めたという便りである。サモアは南太平洋に浮かぶ人口約20万人の小国。元大関小錦の両親の出身地として知っておられる方も多いのではなかろうか。またこの国は、小説「宝島」や「ジキル博士とハイド氏」で知られる作家ロバート・スティーブンソンが晩年を過ごした国としても知られており、首都アピアにはスティーブンソン博物館や彼の墓がある。

スティーブンソンの墓の前に立つ筆者
 この国は2011年の暮れから世界で日の出が最初に見られる国となった。それまでは最後に日の入りを見られる国だったのが、同年12月29日に日付変更線を島の東に移したからである。世界に先駆ける国から届いたこれからの世界が進むべき方向を示唆する便りである。

 時計の上では4時間遅れでサモアを追いかける日本は、プラスチック文明との戦いに全力でかかわる島嶼(とうしょ)諸国にいつ追いつけるのだろうか。

プラスチック袋使用禁止令

 サモア天然資源環境省のセトア・アポ氏からの便りによれば、サモアで発生する廃棄物の28%がプラスチックであり、散乱するプラスチックごみは川を通じて海に流れ、最近の調査では97%の魚の体内にマイクロプラスチックスが検出されるとのことである。

 サモアは島を取り囲む海の環境を守るため、昨年プラスチック袋使用禁止令を制定し、本年1月30日に施行したが、太平洋の島嶼国の中でこの手の禁止令の制定を行った最後の国だそうだ。いずこの島嶼国も真剣に海洋プラスチック問題に向き合っているということである。

東京港でごみを回収する清掃船。ごみの多くはプラスチックだ=東京都江東区、諫山卓弥撮影
 昨年9月4日付の「南の島国からのプラスチック文明への警告―問われる日本社会の対応」で報告したように、南太平洋のフィジーの首都スバで昨年8月に開かれた国際会議「太平洋地域廃棄物管理円卓会議」は、自他ともに島嶼諸国のリーダーと認めるフィジーのバイニマラマ首相の基調演説で始まったが、南の島国が海洋プラスチック廃棄物問題をいかに憂慮しているかを示す真剣で極めて説得力に富むものだった。

 サモアの禁止令では、プラスチックの買い物袋、包装用プラスチック、プラスチック製ストローの輸入・製造・輸出・販売・流通を禁止し、代替用品として紙袋や紙ストロー、パンダナス(タコの木)の葉を編んだ籠などの使用を推奨している。自然の中で分解するものによって成り立っていた、かつての島の生活の様式に極力戻ろうというのである。

腰の重い日本

 言うまでもないことだが、彼らの海を汚しているプラスチックは、彼ら自身が出したものより、日本などの環太平洋の先進諸国からのものが圧倒的に多い。これら島嶼諸国はプラスチック廃棄物問題に率先して取り組むことで先進諸国の努力を促しているのである。

汚れた廃プラスチックの輸出入規制について議論されたバーゼル条約締約国会議=2018年5月、スイス・ジュネーブ、環境省提供
 ところが日本の取り組みは
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