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続々見つかる重力波、高まるKAGRAへの期待

信号キャッチは毎週1個のハイペース、宇宙は重力波にあふれている!

高橋真理子 朝日新聞 科学コーディネーター

2カ月で16個の重力波候補

 4月に入ってから重力波信号が続々と見つかっている。米国のLIGO(ライゴ)と欧州のVirgo(ヴィルゴ)の両重力波天文台がともに感度アップの工事を終え、4月1日から1年間の「第3期観測(3rd Obseving run=O3)」に入った。同時に、重力波らしき信号が来たら公開する「重力波候補イベントデータベース」ができ、ここに5月30日までに16個のイベントが載った。平均して1週間に1個というハイペースだ。岐阜県飛驒市神岡町の地下にある日本の重力波天文台KAGRAは4月に建設作業が終わり、予定を早めて年内の観測開始を目指している。

 データベースで公開されているのは詳しい分析をする前の「速報」なので、重力波ではないものも紛れ込んでいる可能性は高い。それでも、これほどの頻度で信号がやってくるとは驚くしかない。「ついに重力波を発見した」と大々的に記者会見をしてからまだ3年余りしか経っていない。あっという間に、重力波の発見自体はニュースでなくなってしまった。研究者にしてみれば「真に重力波天文学の開始を実感し、感慨ひとしお」(三代木伸二・東大宇宙線研究所KAGRA准教授)となるわけだ。

ブラックホールだけでなく中性子星の合体も

 LIGOが重力波第1号をキャッチしたのは、第1期観測(O1)が始まった直後の2015年9月14日だった。その後の詳しい分析により、これは太陽の36倍と29倍の質量を持つ二つのブラックホールが合体したときに出たものと解明された。きちんと解明できてから、2016年2月に大々的に発表したのだった。

 第1期観測は2016年1月19日までで、この間にとらえられた重力波は3件。いずれも発生源はブラックホールの合体だった。2016年11月30日から2017年8月25日までの第2期観測(O2)では、初めて中性子星連星の合体が見つかるという大ヒットがあり、このほかにブラックホール合体が7件検出された。

 中性子星とは、究極まで密度が高くなった星で、表面には想像を絶するほど強力な磁場があり、極めて強いビーム光を出している。つまり、ブラックホールは「見えない」が、中性子星は「見える」という大きな特徴があり、初めて中性子星の合体が見つかったときは世界中の大望遠鏡がそこを向き、電波からガンマ線まで電磁波のあらゆる波長域で観測することができた。地上と天文衛星を合わせて約70の望遠鏡が参加した結果、ここで金やプラチナ、ウランなどの重い元素が生まれていることが確認されるという素晴らしい成果が得られた。これは「マルチメッセンジャー天文学」の幕開けと位置付けられている。さまざまな伝達手段(つまり電磁波や重力波など)を使って天体現象を突き止めていく新しい時代に入ったというわけだ。

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筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) 朝日新聞 科学コーディネーター

朝日新聞 科学コーディネーター。1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)などを務める。著書に『重力波 発見!』『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

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