メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

蚊学に魅せられ30年、画期的「ぶ~ん蚊祭」開催

6月29、30日に東京・お台場の日本科学未来館で

一盛和世 長崎大学客員教授、元WHO・世界フィラリア症制圧計画統括責任者

蚊とフィラリアと人間の特異な関係

 最初に住んだ国は太平洋の島国、サモアです。「ポリネシア」に分類されるこの国で蚊に出会い、その不思議さ面白さに魅了されてしまいました。そこから私の視界は一挙に広がり、世界がカラフルに輝きだしました。

拡大サモアの地下水があふれる海で洗濯するおばさん=2003年、サモア・ドゥフレレ、水村孝撮影

 世界には3500種類の蚊がいますが、サモアにはたった11種類しかいません。その中で、フィラリア症を媒介するのはポリネシアシマカ(Aedes polynesiensis) と、サモアシマカ(Aedes samoanus)の2種類だけです。

拡大

 これらのボウフラはカニの穴に住んでいたり、タロイモなどの葉っぱと茎の間(葉腋)のほんの少しの水に住んでいたり、名前の通り南海の島国の環境にしっかりなじんで住み着いています。他のシマカ同様に白黒の縞模様のポリネシアシマカは、昼間吸血活動します。昼に海岸に沿って広がるヤシの木のプランテーションに行くとアッという間に半袖から出ている腕が真っ黒になるくらい、この蚊が寄ってきます。一方、サモアシマカはシマカの仲間としては珍しく夜吸血にきます。

 ポリネシアではフィラリアもユニークです。寄生虫であるフィラリアの親虫は人間の体に住んでいます。そして子虫を血液中に生み出します。その子虫を蚊が血液と一緒に取り込み、蚊の体の中で育てて次の吸血の時に人間にうつします。面白いことに子虫が血液中に出てくる時間は決まっています。世界中のほとんどの場所では

・・・ログインして読む
(残り:約1060文字/本文:約2499文字)


筆者

一盛和世

一盛和世(いちもり・かずよ) 長崎大学客員教授、元WHO・世界フィラリア症制圧計画統括責任者

ロンドン大学衛生熱帯医学校で博士号取得。1992年から世界保健機関(WHO)でフィラリア症、マラリア、デング熱などの対策に携わる。太平洋地区のリンパ系フィラリア症対策PacELFチームリーダーを経て、本部の顧みられない熱帯病(NTD)部で世界リンパ系フィラリア症制圧計画の統括責任者を務める。帰国後、長崎大学客員教授。日本の顧みられない熱帯病ネットワーク(Japan Alliance on Global NTDs :JAGntd)を創設、運営委員長。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです