多様化するAI時代のスパコン戦略(1)
2019年06月14日
富士山の高さがポスト「京」の性能の高さを表し、また富士山の裾野の広がりがポスト「京」のユーザの拡がりを意味します
(理化学研究所の発表文)とのことである。富士山は日本を代表する象徴の一つであり、壮大なスケールを連想させる。目標は2021年の稼働で、「最大で『京』の100倍のアプリケーション実効性能を目指す」とされている。
「富岳」プロジェクトの概要は理化学研究所のホームページに掲載されている。目を引くのが「富岳」で用いられるプロセッサである。単体で2.7テラフロップス(毎秒2.7兆回の演算能力)を超え、「京」に内蔵されたプロセッサの20倍の性能となっている。これは倍精度の場合で、単精度だとその2倍、半精度だと4倍の性能に達する。
倍精度や半精度という用語は聞きなれないかもしれない。通常の数値計算は単精度または倍精度で行われる。単精度は、データの桁数が32ビットで、10進数になおせば7桁(107)程度の計算精度である。倍精度は単精度の倍の64ビットで、15桁(1015)程度となり、逆に半精度は半分の16ビットで、4桁(104)程度の計算精度になる。半精度は、整数でいえば、1から数万までの数値しか扱えないくらいの低精度である。「富岳」はさらに8ビットの演算にも対応している。8ビットで表現できるのは、0から255までのわずか256個の数値である。
スパコンはその時代の最高峰のコンピューターである。パソコンなどでは扱えない高精度で大規模な計算を行うために存在してきた。当然、高精度のサポートが中心になる。それが近年、大きく変わりつつある。AIブームの影響である。ディープラーニングなどの機械学習の計算精度が8~16ビットと低い精度で十分であることがわかってきたからである。
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