2013年に世界遺産に、架け替え作業は村人総出
2019年06月29日
マチュピチュの完璧な石の壁からわかるように、卓越した石の文化を持つインカ帝国が、石ではなく草のロープで橋をつくったことに驚かれるかもしれない。しかし、ペルーは地震が多く、ロープの吊橋は確かに利点がある。欠点は、毎日雨が降る季節が数カ月続き、それがロープを弱らせるので、橋を定期的につくり替えなければならないことだ。そのロープ橋が、今日、一つだけ残っている。
クスコ市から南へ約160キロ、曲がりくねった道を4時間注意深く運転すると、最後のインカロープ橋「ケシュアチャカ(Q'eswachaka)」に着く。この名前はケチュア語で「ロープの橋」を意味し、アプリマック川が何百万年もの間に刻んできた峡谷の両側にある村々(ウインチリ、チャウピバンダ、チョックカイワ、セコヤナ・ケウエ)をつないでいる。
ケウエ村周辺の丘陵地帯は、平日の朝は山岳の小さな集落からケウエまで歩いて学校に通う子どもたちであふれている。しかし今日は違う。今日は何世紀にもわたる伝統を目の当たりにする日だ。両親が祖父母の働く姿を見たのと同じように、子どもたちは自分の両親が村人と共同して働くのを見るだろう。橋は少なくとも600年以上、ここにあった。
誰もがロープ橋の周りに集まってきて、興奮が周囲に伝わっていく。道路では草のロープを積んだオートバイが走る。皆、特別な日のための伝統的な衣装を着ている。
橋の架け替えは、この地域の生活の中で重要なイベントであり、すべての大人が参加する。プレコロンビア(スペインに征服される以前)の伝統的な共同作業「ミンカ」の取り決めに従って、村人全員が地元でイチュと呼ばれる丈夫な草を手で2つ撚(よ)りにしてロープを作る。草はまず丸い石で叩いてからアプリマック川から取った水に浸し、やわらかくする。
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