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どうする日韓問題〜心理学者の処方箋

コンプレックス心理を理解し、民間レベルで大胆な交流を

下條信輔 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

 韓国の文在寅政権のかたくなな「歴史の清算」路線もあって、日韓関係が立ち往生している。一度こじれた関係は簡単には解きほぐせそうにない。仲裁を期待される米国にしても、その東アジア政策は(誰が次期大統領になっても)それほどは変わらないだろう。

 これを受けて日本国内では、「強い報復」を主張する強硬論が頭をもたげてきている。これには危険な匂いを感じるが、筆者はそれに抗して対韓協調論を唱えようというのではない。もとより筆者にはこの問題を専門的に語る資格もない。ただあまり注目されていないが、韓国内の世論にある種の分裂、ないしは矛盾を感じ、心理学者として分析の食指が動く。

拡大韓国の文在寅大統領(右)と会談する安倍晋三首相=2018年9月25日、ニューヨーク、代表撮影
 やはり注目したいのは、韓国民、特に若い世代の日本人気だ。一時期は両国関係の悪化を受けて減少した来日観光客も、また増えて来ているという(両国関係はますます袋小路で悪化しているというのに)。韓国の若い世代の日本文化への嗜好・あこがれは、私たちが日本で想像する以上に強く、またある程度は世代間で受け継がれる持続的な性質を持っている。ここに注目しない手はない。

 これは取り立てて新しい論点というわけではなく、専門家の論評でも度々ふれられている。ただ、だからどうするか、という先の掘り下げがない。筆者から見れば「だからどうすべきか」は(少なくとも最初のステップは)、自明と思われる。すなわち、韓国の現政権と国民(とりわけ若い世代)とを、分けて考えることだ。

強硬論で、親日感情を犠牲にするのは愚

 先の「強硬論」にしても、中身をよく吟味した方がいい。現政権を敵とみなした報復措置をやって、結果的に韓国民が被害を受けるのであれば、選択として最悪だ。たとえば入国制限や関税措置などが話題になり、また(福島産海産物の輸入禁止への事実上の報復として)韓国産海産物の検査強化がすでに実施されている。いずれもこのカテゴリーに入ってしまう措置で、逆効果ではないか。というのも、せっかくすでに親日的になってくれている韓国民に罰を与え、遠ざけることになるからだ。

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筆者

下條信輔

下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

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