コンプレックス心理を理解し、民間レベルで大胆な交流を
2019年06月25日
韓国の文在寅政権のかたくなな「歴史の清算」路線もあって、日韓関係が立ち往生している。一度こじれた関係は簡単には解きほぐせそうにない。仲裁を期待される米国にしても、その東アジア政策は(誰が次期大統領になっても)それほどは変わらないだろう。
これを受けて日本国内では、「強い報復」を主張する強硬論が頭をもたげてきている。これには危険な匂いを感じるが、筆者はそれに抗して対韓協調論を唱えようというのではない。もとより筆者にはこの問題を専門的に語る資格もない。ただあまり注目されていないが、韓国内の世論にある種の分裂、ないしは矛盾を感じ、心理学者として分析の食指が動く。
これは取り立てて新しい論点というわけではなく、専門家の論評でも度々ふれられている。ただ、だからどうするか、という先の掘り下げがない。筆者から見れば「だからどうすべきか」は(少なくとも最初のステップは)、自明と思われる。すなわち、韓国の現政権と国民(とりわけ若い世代)とを、分けて考えることだ。
先の「強硬論」にしても、中身をよく吟味した方がいい。現政権を敵とみなした報復措置をやって、結果的に韓国民が被害を受けるのであれば、選択として最悪だ。たとえば入国制限や関税措置などが話題になり、また(福島産海産物の輸入禁止への事実上の報復として)韓国産海産物の検査強化がすでに実施されている。いずれもこのカテゴリーに入ってしまう措置で、逆効果ではないか。というのも、せっかくすでに親日的になってくれている韓国民に罰を与え、遠ざけることになるからだ。
これは何も韓国からの観光客に限らず、日本企業と関係を持つビジネスマンや、様々な文化交流を含む話だ。彼らがひとたび(潜在心理まで丸ごと)反日にシフトするや、その負の効果は後々まで両国間に災厄をもたらすと覚悟しなくてはならない。
繰り返しになるが、政治権力と民を分けて考えなくてはならない。政権はいずれ数年単位で交代し、政治方針も変わる。(実際、罷免運動まで起きている文政権は早晩退陣するだろうし、次期政権はおそらく日韓関係の修復に走るだろう)。これに対して、ポップカルチャーが反映する潜在的な親日感情は、世代を超えて受け継がれる。たとえば和食への親みもあるだろうし、富士山やスキーなどの観光、秋葉原ツアーやメイド・カフェなどのアニメ・コスプレ文化、等々。文化レベルでの親日指向は、そう簡単には覆らない。
他方、日本の側にも韓流ドラマやKポップ、韓国料理などのファンは一定数いて、韓国への観光客も一時的な増減はあれ、途絶えることはない。ネトウヨなど一部の政治的例外を除けば、民間レベルでは相互に親近感の方が勝っているともいえる。
ただここへきて、特異な非対称性が現れてきた。日本に「良いイメージ」を持つ韓国人が増える一方で、日本人の韓国に対するイメージは悪化しているという(J-CASTニュース、2019/06/12)。民間交流が唯一クッションになっているという点はその通りで、「政権と民は別」という本稿の論点とも重なる。
とはいえそれだけでは、この非対称性の説明にはならない。もちろん両国間でメディアの扱いも正反対に近いから、というのも理屈だが、今問題にしたいのはそもそもどうしてそうなったかという、おおもとの部分だ。
その意味であらためて事態を直視しすると、政治・世論・文化まですべてを貫通する別の要因が、韓国民の潜在心理のレベルで蠢いている。その観点から筆者が唱えてみたいいのは、韓国民の日本に対する「 コンプレックス」説だ。
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