『「地球温暖化」の不都合な真実』を翻訳・刊行した
2019年07月04日
著者のマーク・モラノ氏は1968年生まれのジャーナリスト。国内外の科学者や政治家(たとえばチェコ元大統領)への精力的な取材をもとに軽妙な筆で論を張り、地球温暖化の恐怖を警告する「脅威派」と、それに疑いの目を向ける「懐疑派」双方の声を吟味した。ご本人の講演動画が、滑らかな口調と強い気迫をよく伝える。読みとれる米国の風土(談論風発、共和党と民主党の確執)も興味深い。
刊行から1年4か月を経ても米国Amazonのベストセラー状態にある同書のサワリを紹介したい。
全20章のうち、最初の章は著者の自己紹介で、2~8章は科学的データの吟味に当てられている。
「人間の出すCO2(二酸化炭素)が地球を暖めて危ない」というのが温暖化脅威論だ。国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が中心となって広めてきた。確かに過去20年、CO2濃度は増加の一途だったが、衛星で観測した地球の気温はほぼ横ばいが続く。地上の気温データは、都市化(ヒートアイランド)効果を含むので全体の動向を知るには適さない。しかし米航空宇宙局(NASA)や米国海洋大気局(NOAA)が発信する「世界の気温推移」グラフは、地上データをまとめたものだ。しかもグラフ化の際、生データを加工して近年の気温上昇を「演出」してきた気配も濃い。
北極のシロクマは危機になど面しておらず、数が増えているし、海面上昇のスピードは100年以上ほとんど変わっていない。南極では氷がじわじわ増えている。グリーンランドの氷河は過去100年間ずっと縮小中で、人為的CO2とは関係ない。
地質学者は「地球史上ほとんどの期間、気温は過去200年間より高かった」「(現在の)大気のCO2濃度は史上いちばん低い部類に入る」という。
温暖化科学は、モデル予測に頼る。だがモデル計算で確実なことは何もいえない、と多くの研究者が指摘する。
9章は、脅威論をいったんは受け入れたあと、データを調べ、または脅威派集団の「主張の異なる研究者は排除する」といった不品行を見て、懐疑派に転じた研究者や論客を紹介する。1973年に江崎玲於奈氏とノーベル物理学賞を共同受賞したアイヴァー・ジエーバー、環境運動の始祖ジェームズ・ラブロック、名高い環境団体グリーンピースの共同設立者パトリック・ムーアなど、十数名の大物「転向者」が取り上げられ、一部には直接取材もしている。
元NASAの科学者でマンチェスター大学名誉教授レス・ウッドコックは「数百万年間、地球の気温は上下動を繰り返してきた。大気のCO2濃度と関係はなく、むろん人間活動とも関係ない。まっとうな科学者なら、温暖化の脅威など存在しないと言うはず。金儲けしたい連中がこしらえた空想物語にすぎない」「人為的温暖化説は、まだ誰ひとり証明していないのだ」と語っている。
14章は、
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