山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員
スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。
「はやぶさ」のノウハウを頼りに、欧州は低コストで太陽系外起源の彗星を目指す
昨年夏に公募された欧州宇宙局(ESA)の小型科学ミッションに彗星が選ばれた。太陽系ミッションとしては2012年に選択された木星の衛星探査機以来の採択となる。
その隙間にチャンスがある。日本の技術が一定水準を超えた1980年代後半からは、彗星探査機すいせい(1985年)や磁気圏探査機あけぼの(1989年)、太陽観測衛星ようこう(1991年)など、どのミッションも国際評価が高い。私の住む小国スウェーデンすら、同じ原理で初衛星「ビーキング=viking」(1986年打ち上げ)が10年以上も世界最先端の成果を出し続けた。
ただし、いくら隙間で先陣を切っても、同じ対象にNASAが本気で挑めばより完璧なミッションで上書きされかねない。なんせ予算が1桁以上は上なのだ。だが、現実には、いったん出来た隙間は、その後も残りやすい。というのも、使われる工学技術やデータ解析技術が対象ごとに異なり、そのノウハウの量は膨大だからだ。
それを理解するには、宇宙科学探査を観測手段で分類するのが早い。大きく3つに大別される。①ゼロ距離で調べる現場探査、②近中距離からのリモートセンシング、③望遠鏡による遠方探査だ。
一つ目の現場探査には、飛行している地点を調べるプローブや、地表探査車(ローバー)などを使ったサンプル調査がある。プローブは宇宙時代の最初期での主流だった。月や金星・火星などの着陸ミッションは、冷戦時代の宇宙開発競争でも脚光を浴びた。比重が低くなった近年でも、金星を除く太陽系探査で欠かせない観測手段となっている。
二つ目のリモートセンシングには、低高度衛星からの地上・大気探査はもちろんのこと、静止衛星からの探査も含まれる。近年の主流であり、太陽系探査でも現場探査以上に重要になりつつある。実用・軍事目的でも頻用されており、今やインフラの一部といってもよい。
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