前時代的な日本の環境アセス
2019年07月17日
名古屋大学名誉教授の島津康男氏が6月21日、92歳で逝去された。氏は、環境アセスメント学会初代会長を務められ、日本における環境アセスメント制度の導入に多大な貢献をなされた方である。たびたび沖縄を訪れ、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡るアセスを「独善、時代遅れの最悪のアセス」と評し、日本の環境アセスメント制度の形骸化を嘆いておられた。
しかし新基地建設の本体工事が2015年10月29日に始まってからは、投入土砂による辺野古・大浦湾の汚濁が着実に進行し、母親ジュゴンBは死亡し、残りの2頭のジュゴンも今やその影は全く見当たらない。
辺野古アセスが「独善、時代遅れの最悪のアセス」である理由は数限りなくあるが、最も分かりやすいのは、使用する機種がオスプレイであることをひた隠しにしたことである。辺野古新基地はオスプレイのための飛行場であるのに、アセスの設計図である「方法書」(2007年8月7日付け)と調査結果をまとめた下書きにあたる「準備書」(2009年4月1日付け)には、オスプレイのことが一切触れられていなかった。
そのままでは新基地でオスプレイを飛ばすことができなくなる。そこで事業者である沖縄防衛局は、2011年6月6日にファックス1枚を沖縄県と宜野湾市に送り、普天間基地へのオスプレイ配備を通知した。普天間「代替」基地との位置づけであった辺野古新基地へのオスプレイ配備がこれによってはじめて明らかになったのである。そして最終報告書にあたる「評価書」(2011年12月28日付け)では、オスプレイを使用機種としてのアセス結果が示されたのである。
しかしこれはアセス法第28条違反の「後出し」である。環境庁環境影響評価研究会著の「逐条解説・環境影響評価法」(ぎょうせい・平成11年)は、28条の趣旨を「本条は、手続きの途中で事業規模の拡大や事業の位置の大幅な変更など、環境影響が増大するような事業内容の変更を認めれば、それまでの手続きの意義が失われ、ダミー案によって手続きの主要部分をくぐり抜ける事業者が出現する可能性があるため、これを防止するために置かれたものである」と述べている。
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