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宇宙でも地球上でも、もっと協調する世界に

歴史的偉業「人類月に立つ」から50周年に、今後の50年を考える

山崎直子 宇宙飛行士

 「Eagle has landed.」

拡大アポロ11号ミッションのエンブレム。月着陸船の名前「イーグル」にちなんでワシがデザインされた=NASA

 ニール・アームストロングとバズ・オルドリンの両宇宙飛行士をのせた、アポロ11号の月着陸船「イーグル」が月面に舞い降り、月面に人類初の足跡を残してから50年。私は、アポロ11号の後に生まれた世代ですから、当時のリアルタイムでの記憶はありません。子どものころは、図鑑や学校の教科書に出てくるアポロ月面着陸の写真を見て、いわゆる歴史上の遠い出来事だと感じていました。

本や映画で追体験

 それが、身近とまでは言えないまでも、驚嘆と共感を持って感じられるようになったのは、実際にミッションに関わっていた人たちを知るようになったからです。

 『宇宙からの帰還』(立花隆著、中央公論新社)は、学生時代に出会い、訓練中も読み返した本です。アポロ時代の宇宙飛行士たちの内的体験に触れたのは、本書が初めてでした。宇宙から帰還後、牧師になった人、精神のバランスを崩した人、芸術家になった人、様々な人生があることを知り、本人だけでなく家族も含め、まさに人生を賭けてミッションに挑んでいたことを感じました。

 また、映画からも多くのことを学びました。2000年にオーストラリアで制作された「月のひつじ(原題:The Dish)」は、オーストラリアの小さな町の天文台が、月着陸の瞬間をリアルタイムで中継するという、大きな責任を担った実話を描いています。そのお蔭で、全世界の人口の20%が、月着陸の瞬間を見届けることが出来ました。こういう形でアポロ11号の成功に貢献した人たちもいたことに感銘を受けます。

拡大映画「ドリーム」のポスター画像=オフィシャルサイトから

 昨年公開された「ファースト・マン」は、アームストロング船長の人生に焦点を当てており、アポロ宇宙飛行士が背負ったプレッシャーの大きさに胸が詰まる思いで見ました。また、まさに月面着陸50周年を記念して今年制作されたドキュメンタリー「Apollo11 完全版」は当時の映像資料を4Kリマスターした実写映画ならではの迫力があります。

 さらに、2017年(米国では2016年)に公開された「ドリーム(原題: Hidden Figures)」も忘れられません。これは、アポロ計画ができる前の1960年代初頭、初めての有人宇宙飛行の成功を支えた女性“計算手“たちの不屈の精神が描かれています。史実と違うところも多いと聞きますが、人種差別が横行していた時代に数学が得意で有能な黒人女性たちが嫌がらせや不当な慣行をはねのけて実績を残したのは事実でしょう。そういう女性の先輩がいたことには、大いに勇気をもらいます。

多くの力を合わせれば不可能も可能に

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筆者

山崎直子

山崎直子(やまざき・なおこ) 宇宙飛行士

宇宙飛行士、立命館大学客員教授、女子美術大学客員教授。東大工学部航空学科修士課程修了、1996年に宇宙開発事業団(現・宇宙航空研究開発機構)に入り、2001年に宇宙飛行士に認定。10年にスペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗、国際宇宙ステーション組み立てに参加した。2011年8月に宇宙航空研究開発機構を退職。著書に「夢をつなぐ」(角川書店)など。

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