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「在宅で最期を迎える」は世界的な潮流

日本の社会保障制度を持続可能にするには、われわれの意識改革が必要

北原秀治 東京女子医科大学特任准教授(先端工学外科学)

 世界に先駆けて高齢化率(65歳以上が総人口に占める割合)が30%を越えようとしている日本。そこで日常的に話題になるのが医療と介護である。

ますます課題になる介護の人材確保
 平均寿命から健康寿命を引くと、差が約10年ある。特別に健康な人をのぞき、この10年間こそが、一般的には病院や介護施設にお世話になる年数である。ほかにも、先日の金融庁の老後2000万円問題があるし、老後の問題をめぐって日本の将来には不安が非常に多い。

 2000年に施行された介護保険制度についても、政府支出の対GDP比が現在の10%から2040年には25%になると試算された。今後は給付の引き下げも避けられないだろう。

2025年までに地域包括ケアシステムを構築

 社会保障制度を持続可能にするには、「地域包括ケア」というシステムの構築が急務だといわれる。これは2016年に厚生労働省より出された政策で、「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築を推進する」というものである。団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、こうした体制を作り上げようとしている。

 たしかに高齢化の進展状況には大きな地域差があり、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことは、望ましいことだ。だが、はたして現実はこのようにうまくいくのだろうか。

 こうした問題意識のもと、昨年行われた日本医師会とハーバード大学の合同シンポジウムでは、日本の介護システムの在り方、そして死についての考え方など踏み込んだ内容の議論が行われた。そこで誰もが口をそろえたのは、

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