録画リプレイのなかった時代に、生中継映像が劣化に劣化を重ねた裏事情
2019年07月20日
アポロ着陸50周年ということで様々な記事がでていて、当時の記憶を語るものも少なくない。検索すると、テレビで生放送を見ていたという内容が結構あるし、映像を見たというのもある。実際、50周年ということで海外テレビ局が、着陸時のかなり鮮明な映像を出したりしている。例えばBBC日本語版の記事には、着陸時の映像が司令船と着陸船の両方から出ていているし、NASAも50周年でビデオのダウンロードサイトを開いている。そのうちの着陸直前の映像は、確かに見た記憶がある。
気になって調べたところ、どうも、月面歩行はあまりに画像が悪くて、たといテレビて見ていたとしても、印象に全く残らなかったらしいということと、当時のフィルム代があまりにも高すぎて、着陸直前の重要な数分の衛星中継を録画していなかったのではないか、という想像にたどり着く。
司令船や着陸船から送られた映像は、SSTV規格と呼ばれる走査線320本の毎秒10フレームで、動画というよりも、高速連続写真だった。当時の家庭テレビの標準がNTSCと呼ばれる走査線525本の毎秒30フレームだったのに比べて非常に粗いものだ。これは、当時の通信技術でこれ以上のデータはリアルタイムでは送れなかったからだ。生中継を目指すために、低い規格を利用したのである。
それでも、その規格のままに再現すればクリアーな映像となる。しかし、目的が生中継であったことから、NTSCのテレビ規格に変換する必要があった。現代のデジタル技術と異なり、当時の技術では、特にリアルタイムでの変換では、映像の劣化は避けられなかった。
問題はそれだけではない。受信局はオーストラリアで、そこでNTSC規格に変換したものだから、変換した映像がオーストラリアから米国まで衛星通信される際にさらに劣化したのである。というのも、変換されたNTSC映像はアナログ映像であって、長距離通信でノイズが入りやすかったからだ。当時のTV生中継を再現したビデオがNASAから出ている。
日本への映像は、NASAからさらにもう1回、衛星通信を経ている。そこで3度目の劣化が起こった。朝日新聞の夕刊(私の郷里は夕刊が無かったので、翌日朝刊)を飾った写真の画像が
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