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サンマの国際漁業規制が意味するもの

日中など8カ国が総枠に合意したが、必要なのは国別の枠設定だ

片野歩 水産会社勤務

北欧の効果的な資源管理の例

 海外に目を向けてみる。資源が共有されているサバ、ニシン、マダラなど北欧での青物・底魚の主要魚種には、科学的根拠に基づき魚種ごとに漁獲枠(TAC)の総枠と国別配分(比率)が毎年設定され、さらに漁業者や漁船ごとに個別割当制度(IQ、ITQなど)が適用されている。日本では2018年12月に70年ぶりの漁業法改正があり、本格的に資源管理に取り組むことになったが、北欧のやり方には参考になる事例が多い。

 図はノルウェー、EU、アイスランドなどが調査船や漁船を出して、合同で毎年夏に行う資源調査結果を表したものである。赤色がサバで青色がニシン。サバもニシンも各国のEEZを越えて広く回遊・分布している。

 北欧では国際海洋探査委員会(ICES)が窓口になり、調査データを利用した科学的根拠に基づくアドバイスが行われ、その数量をベースに多くの漁獲枠が毎年決められていく。もともと、サバに関しては2007年以前には、アイスランドのEEZ内に回遊することはほとんどなかった。ところが、温暖化が原因と考えられる回遊パターンの変化により、それまでサバの資源を管理してきたノルウェー・EU・フェロー諸島(デンマーク自治領)の海域から離れて回遊するようになった。

 このため、関係国で国別TACの配分に関する議論が過熱した。サバの回遊の変化によって最も恩恵を受けているアイスランドでは、自国で漁獲可能とされる資源量の1割程度に漁獲枠を抑えている。自国に回遊してくるサバは多いので、やる気になれば枠を大幅に超えて獲れる。しかしながら、EUやノルウェーなども同じ群れを漁獲する。同じ群れを獲り合えば、中長期的には資源が減少して自国に跳ね返り、結局、投資した漁船や加工場が原料不足で立ち行かなくなることが分かっているのだ。

 一方で、同じ北欧でも、アジやアカウオ資源の中で国別TACが実際の漁獲量よりも多かったり、国ごとの合意がされていなかったりしているケースでは、資源が回復しているとはいえない。

今回は漁獲枠の国別配分を決めなかった

 今回のNPFC会議で決められたのは、漁獲量の上限である総枠である。総枠は公海とEEZに分けられているものの、国別TACは決められなかった。本来は、資源管理に国別TACが不可欠だ。さもないと、早い者勝ちになり、いわゆるオリンピック方式となる。各国は、将来の国益となる自国への配分比率を高めるために漁獲量を増やそうとして漁獲圧力が高まる。

 この委員会は2015年に第1回が開かれ、すでに5年が経過している。国別TACの交渉は、そもそも今回の日本の提案には入っていなかった。国別TACは、2017年に初めて日本が提案したが否決された。資源の減少が予測されていた中で、総枠は前年実績の35万トンより大幅に増やす56万トン(最終実績26万トン)を提案し、国別TACについては、自国漁獲枠は24万トンで前年実績11万トンの倍以上にし、漁獲量を伸ばしている中国は前年実績より少ない5万トンとした。会議に参加した8カ国・地域のうち日本案に賛成したのは台湾のみであった。

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筆者

片野歩

片野歩(かたの・あゆむ) 水産会社勤務

早稲田大学卒。2015年、サステナビリティについて話し合う「シーフードサミット」で日本人初の政策提言部門最優秀賞を受賞。著書に『日本の漁業が崩壊する本当の理由』(ウェッジ)、『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会・共著)、『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)。

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