はしかの流行が今世紀最悪となった米国で問題が浮上している
2019年08月09日
米国ではしか(麻疹)の流行が止まらない。
昨年秋からニューヨーク市などで流行が始まり、米疾病対策センター(CDC)によると今年に入ってから8月1日までの患者数は1172人にのぼる。このうち124人が入院し、64人が肺炎や脳炎などを合併したと報告されるなど、症状が重い人たちもかなり含まれている。決して軽い病気ではない。
8月に入ってからも「カリフォルニア州サンディエゴ郡の生後11カ月の乳児がフィリピン旅行から帰った後、はしかで入院」など、はしかに関する報道が続いている。
米国は2000年、国内に由来するはしかの感染がなくなった「排除状態」になったものの、海外からウイルスが持ち込まれる散発的な感染は起きていた。しかし、1000人を超える今年の流行は21世紀に入って最悪の事態だ。患者発生はニューヨーク州など東海岸からカリフォルニア州など西海岸まで30州に及ぶ。
ニューヨーク市は4月、公衆衛生上の非常事態を宣言し、流行している地区の住民や通勤者にワクチン接種を義務づけた。
政府やCDC、ニューヨーク市などはさまざまな機会を通して「ワクチン接種を」と呼びかけている。外からウイルスが持ち込まれた場合でも、ワクチンの接種率が高ければ集団免疫効果によって他の人たちへの感染を防ぐことができる。
米国では「排除状態」になって以降、感染を局地的に抑えてきていた。感染が広がった要因としてCDCが挙げているのは、宗教などさまざまな理由でワクチンを受けていない集団が米国内にあることだ。
「ワクチンへのためらい」が世界の公衆衛生の大きな課題になっている。
WHOが発表した「2019年の国際保健の10の脅威」として「大気汚染と気候変動」「薬剤耐性菌」「インフルエンザの世界的大流行」などとともに「ワクチンへのためらい」が挙がっている。
ただし、「ためらい」は「拒絶」ではない。ていねいに説明すれば理解が得られるという側面がある。
三重県内での集団感染の発端になった宗教団体はWebサイトにおわびを掲載した。「医薬に依存しない健康」を重んじてワクチンを受けていない信徒がいたものの、今後は保健所の指導に従うとしている。
ニューヨーク市のはしか集団感染でもワクチンを受けていない宗教コミュニティ内での感染が指摘されている。
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