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初任給が高騰するAI人材とは誰のこと?

産業界が求めているのは、AIをツールとして使いこなすことができる人

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

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初任給730万円、いや1000万円も

 今年6月、ソニーがAI人材の初任給を最高730万円に引き上げると発表した。NECなど、1000万円に設定している企業も出てきている。飛躍的に発展を続けているAI分野において、産業界の焦燥はかなりのものである。先日、ソフトバンクグループの孫正義社長は「日本はAI分野の後進国」という警鐘を鳴らした。

 「AI」関連情報は、メディアでも毎日のように取り上げられている。身近になった「AI」だが、「AI人材」と聞いて、皆さんはどのような人たちをイメージするだろうか?

 筆者の研究室は電気電子工学のコースに所属していて、3次元映像計測を中心に高速計算の研究を行っている。読み書き可能なLSIである「FPGA」やコンピューターに内蔵されているグラフィックスボードを利用した「GPU」コンピューティングなどを駆使して10~20年先の技術開発を目標にしている。名前を電子情報システム研究室という。

 隣は小圷成一教授のシステム数理研究室である。「ニューラルネットワーク」「機械学習」「最適化理論」などの研究を40年近く続けている。卒業論文や修士論文の審査などを通して、お互いに研究内容をよく知る間柄だ。

 上記の「FPGA」「GPU」「ニューラルネットワーク」「機械学習」「最適化理論」は、すべて今日のAI技術のキーワードである。数理システム研究室の「機械学習」や「最適化理論」はAIの本流である。AIがブームになり始めたとき、上述のような研究環境にあったため、筆者の研究室でもスムーズにAI手法を研究に取り入れることができた。

 ただし、筆者の研究室と数理システム研究室では、当然ながら、研究手法が大きく異なる。筆者らの研究室ではAIモデルの本質にまで手を出すことはしていない。これまでに開発されてきた計算手法(アルゴリズム)を利用してシステムを構築する。一方、理論系の数理システム研究室は、AIの根幹をなすアルゴリズムそのものをより良くするための研究を続けている。学問的には後者が「AI研究者」である。ところが、産業界で厚遇されつつある「AI人材」は、おそらく前者である。そこに現在のAIブームの本質があり、産業界からの要請が垣間見られる。

現在のAIブームの技術的背景

 現在のAIブームは、アルゴリズムに画期的な革新があったから始まったわけではない。本質はコンピューターシステムの飛躍的な発展である。技術的な背景は、次の3つに集約できる。

(1)インターネットの発展により、膨大なデータ(ビッグデータ)を取得できるようになった。
(2)コンピューターがビッグデータを処理できるほど高速になった。
(3)AIをツールとして手軽に使えるソフトウェアの開発環境(プラットフォーム)が普及した。

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筆者

伊藤智義

伊藤智義(いとう・ともよし) 千葉大学大学院工学研究院教授

1962年生。東京大学教養学部基礎科学科第一卒、同大学院博士課程中退。大学院生時代に天文学専用スーパーコンピューター「GRAPE」の開発にかかわり、完成の原動力となる。現在は「究極の3次元テレビ」をめざし研究中。著書に、集英社ヤングジャンプ「栄光なき天才たち」(原作)、秋田書店少年チャンピオン「永遠の一手」(原作)、集英社新書「スーパーコンピューターを20万円で創る」など

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