メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

ゾンビのような温暖化懐疑論(上)

科学的な間違いと典型的なテクニックを改めて検証する

明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

科学的な間違いと典型的なテクニック

 まず、彼らの主な論点と、それがいかに科学的に間違っており、その際にどのような議論のテクニックを使っているかを明らかにする。

 第一に、渡辺氏は、お決まりの使い古された懐疑論を、モラノ氏の本から紹介している。

 「地上の気温データは、都市化(ヒートアイランド)効果を含むので全体の動向を知るには適さない。しかし米航空宇宙局(NASA)や米国海洋大気局(NOAA)が発信する「世界の気温推移」グラフは、地上データをまとめたものだ」というものだ。

 しかし、米航空宇宙局や米国海洋大気局に限らず、多くの気象観測機関や研究機関は、海上データ、衛星データ、海洋の熱蓄積量、など様々なデータをまとめており、全体としてほぼすべてが人為的CO₂排出による長期的な温度上昇傾向を示している。地上データに関しても、ヒートアイランド効果を取り除いた計算結果がすでに多く出されていて、それらも上昇傾向を示している。

 第二に、渡辺氏は、「海面上昇のスピードは100年以上ほとんど変わっていない。」と、ご自身の見解を述べている。その証拠として、米ニューヨーク州にあるバッテリー公園海水準のデータを挙げ、「人為的CO₂が急増した1945年以降もそれ以前も同じペースで上昇している。つまり、海面上昇は人為的CO₂とは関係ない」と結論づけている。

図1 1700年以降の全球における海面上昇
出典:IPCC第5次報告書第一作業部会技術要約
https://research.csiro.au/slrwavescoast/sea-level/future-sea-level-changes/
拡大図1 1700年以降の全球における海面上昇 出典:IPCC第5次報告書第一作業部会技術要約 https://research.csiro.au/slrwavescoast/sea-level/future-sea-level-changes/
 しかし、図1を見ていただければおわかりのように、全球での海面上昇のデータは、産業革命以降のCO₂排出量の上昇と海水準の上昇量との相関関係を明確に示している。
・・・ログインして読む
(残り:約1839文字/本文:約3575文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

明日香壽川

明日香壽川(あすか・じゅせん) 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

1959年生まれ。東京大学工学系大学院(学術博士)、INSEAD(経営学修士)。電力中央研究所経済社会研究所研究員、京都大学経済研究所客員助教授などを経て現職。専門は環境エネルギー政策。著書に『脱「原発・温暖化」の経済学』(中央経済社、2018年)『クライメート・ジャスティス:温暖化と国際交渉の政治・経済・哲学』(日本評論社、2015年)、『地球温暖化:ほぼすべての質問に答えます!』(岩波書店、2009年)など。

明日香壽川の記事

もっと見る