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被爆74年 広島・長崎の「平和宣言」を読む

核兵器廃絶に向けて何ができるか、私たち一人ひとりが問われている

鈴木達治郎 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授

 一方で、理性に基づく国際情勢の分析も両市の平和宣言にきちんと含まれている。広島平和宣言では、冒頭に国際情勢についての文章がある。「今世界では自国第一主義が台頭し、国家間の排他的、対立的な動きが緊張起案を高め、核兵器廃絶への動きも停滞しています」。短いながら、現在の国際情勢の危機的な状況が簡潔にまとめられている。長崎平和宣言では、「核兵器をめぐる世界情勢はとても危険な状況です」という段落で、米国とロシアの核戦略の問題を指摘し、「世界から核兵器をなくそうと積み重ねてきた人類の努力の成果が次々と壊され、核兵器が使われる危険性が高まっています」と、きわめて強い危機感を表明している。

核保有国・世界のリーダーへのメッセージ
核軍縮義務と被爆の実相

 次に核保有国へのメッセージを見てみよう。広島平和宣言では、とくに「核保有国」を特定したメッセージはないが、「かつて核競争が激化し緊張状態が高まった際に、米ソの両核大国の間で『理性』の発露と対話によって、核軍縮に舵を切った勇気ある先輩がいたということを思い起こしていただきたい」と、最近の米ロ関係に批判的なメッセージが書かれている。一方、長崎の平和宣言では、明確に核保有国のリーダーに対してメッセージを送っている。「核兵器をなくすことを約束し、その義務を負ったこの条約(核不拡散条約)の意味を、すべての核保有国はもう一度思い出すべきです。特にアメリカとロシアには、核超大国の責任として、核兵器を大幅に削減する具体的道筋を、世界に示すことを求めます」

拡大広島市の平和記念式典で献花をする学生たち=2019年8月6日
 さらに、両市の平和宣言がともに強調したのが、被爆の実相への理解を求めている部分である。広島平和宣言では、「世界中の為政者は……被爆地を訪れ、被爆者の声を聴き、平和記念資料館、追悼平和祈念館で犠牲者や遺族一人一人の人生に向き合っていただきたい」と述べている。長崎平和宣言でも、「すべての国のリーダーの皆さん、被爆地を訪れ、原子雲の下で何がおこったのかを見て、聴いて、感じてください。そして、核兵器がいかに非人道的な兵器なのか、個々に焼き付けてください」と強い表現で、被爆の実相を心に刻むことを求めている。

日本政府へのメッセージ
核兵器禁止条約と北東アジア非核兵器地帯

 3番目のポイントは、日本政府へのメッセージだ。 ・・・ログインして読む
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筆者

鈴木達治郎

鈴木達治郎(すずき・たつじろう) 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授。1951年生まれ。75年東京大学工学部原子力工学科卒。78年マサチューセッツ工科大学プログラム修士修了。工学博士(東京大学)。マサチューセッツ工科大エネルギー環境政策研究センター、同国際問題研究センター、電力中央研究所研究参事、東京大学公共政策大学院客員教授などを経て、2010年1月より2014年3月まで内閣府原子力委員会委員長代理を務め、2014年4月より現職。またパグウォッシュ会議評議員を2007~09年に続き、2014年4月より再び務めている。

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